目を合わせるまでの距離

トイレから戻ると、入口付近にダンボールが新しく積まれていた。

カイロ、紙皿、簡易トイレ袋、追加の水。

腕章の先生が「配布の手伝い、数名お願いします」と通る声。

胸の中に波紋が立つ。

手を上げる瞬間に、だれかの目とぶつかる予感がするから。

でも足が半歩、前に出た。

母がうなずく。

受付台の横に並ぶと、同じように集まった人が数人。

私は紙皿の束を両手で受け取り、列の先頭にブルーテープを引いて目印を作る。