目を合わせるまでの距離

端の区画に腰を下ろすと、ビニールの擦れる音、子どもの泣き声、名簿を読む声、濡れた靴のきしみが重なって、体育館は大きな生き物みたいに息をしている。

毛布を半分だけ広げ、膝にかける。

熱がじんわり移ってきて、足の力が抜ける。

四つ吸って、四つ止めて、四つ吐く。

ここは安全。

心の中で三回唱える。

唱えるたび、肩の硬さが一枚ずつ剥がれていく。

天井の照明は白く明るいが、目を細めれば耐えられる。

長い夜になりそうだ。

長いなら、数で刻めばいい、と自分に言い聞かせる。