目を合わせるまでの距離

体育館に入ると、ひやりとした空気と高い雨音が迎えた。

床にはテープで区画が引かれ、受付の机に名簿とボールペン、濡れた手を拭くペーパー。

私は机の角に視線を置いたまま、ペンを受け取る。

名字、名前、住所。

文字は震えない。

係の人が銀色の毛布を差し出し、別の人が「水はおひとり一本ずつ」とペットボトルを並べる。

私は「ありがとうございます」と小さく言い、目は毛布の角。

父は水を二本、母はタオルと替えのマスクを受け取った。