目を合わせるまでの距離

私は視線を地面に置き、白線の継ぎ目をたどる。

どこかの家から、テレビの天気図がちらりと見え、救急車のサイレンが遠くで細く揺れた。

横断歩道の白が濡れて鈍く光る。

信号が青になり、列は小さく前へ進む。

学校の門柱が雨で黒く濡れていた。

腕章の人が反射ベストを光らせ、「体育館はこちらです」と手を振る。

私はうなずき、呼吸をもう一度整える。

屋根の下まで、あと少し。

肩に置かれた母の手の重さが合図になって、足が自然に前へ出た。