目を合わせるまでの距離

外へ一歩出た瞬間、雨は糸じゃなく棒のように落ちてきた。

街灯の輪の中でだけ、白い線がはっきり見える。

母が私の肩に手を置き、歩幅を合わせる。

父は傘を低くして足元を見ながら、「ここ深い、気をつけて」と短く言う。

靴の中に冷たい水が入り、靴下がゆっくり重くなる。

四つ吸って、四つ止めて、四つ吐く。

角を曲がるたび、同じ方向へ歩く人の背中がふえる。

見覚えのある傘の柄、知らないコートの色。