四つ吸って、四つ止めて、四つ吐く。

呼吸に合わせて指先の冷たさがゆっくり戻る。

窓に雨粒が当たり、ガラスが低く鳴った。

レインコートのファスナーを喉元まで上げ、フードを被る。

玄関の鏡に映る自分とは、目が合える。

小さくうなずくと、心臓の鼓動が一拍ぶん静かになった。

靴ひもを結ぶ音が少し急いでいる。

父が懐中電灯を一本渡してくれ、母はタオルと水のペットボトルをリュックに入れる。

「大丈夫、ゆっくりね」

母の声にうなずき、ドアノブを回す。

外の空気はぬるく、雨の匂いが濃い。

開いた隙間から、白い線のような雨脚がこちらへまっすぐ伸びてきた。