枕元のスマホが短く震え、紫の帯に白い文字がにじんだ。

――「避難指示(レベル4)」

さっきまで半分眠っていた頭の奥で、夕方ニュースの川の映像が遅れて流れ出す。

濁った水面、逆立つ草、低い雲の重さ。

廊下でスリッパが鳴り、母が顔をのぞかせた。

「学校の体育館だって。準備しよ」

父はテーブルでハザードマップを開き、濡れやすい道に斜線を引きながら「このルートなら浅い」と指でなぞる。

私は防災袋の口を確かめ、懐中電灯を一本握った。

電池は新しい。