目を合わせるまでの距離

放課後、空は鉛筆で塗ったみたいな色になっていた。

市の防災アプリが、強い雨への注意を告げる。

家に帰ると、母がベランダの洗濯を取り込みながら、「明日、また降るかな」と言った。

私はうなずき、靴をそろえる。

ランドセルではないけれど、帰ってきた手順は小学生のころから変わらない。

机に教科書を置き、給食着を洗濯かごへ。

机の隅の消しゴムには、六年の春の跡がまだ細く残っている。

窓を打つ音が増えた。

遠くで雷が、低く鳴った。

夕方、ニュースは川の映像を流していた。

茶色い水が早く、岸の草が逆立つ。