目を合わせるまでの距離

昼休み、購買の前で列に並ぶ。

棚のパンは、名前の長いものほど安心できる。

パッケージの細かい文字を読み、視線をそこに縫いとめる。

後ろから男子の声。

「どいた?」

呼ばれた気がして身を縮めたが、私ではなかった。

胸の波紋が大きくなりかけて、四拍の呼吸で小さくする。

レジの前に立ち、値札だけを見る。

トレーを受け取る指が冷たい。

窓際の席で、りこが半分パンを分けてくれた。

「味は平気?」

私はうなずく。

窓の下で、風が砂を転がしていた。

教室へ戻る途中、掲示板に週間天気のプリントが貼られていた。