目を合わせるまでの距離

友だちのりこは列の最後尾で軽く伸びをして、こちらに片手を上げた。

私は親指を小さく立てて返す。

体育館の天井は高く、窓からの光がほこりを細く照らしている。

窓の光がほこりに名前がついていたら、私は目を合わせられるのだろうか、と下らないことを考える。

ホイッスルの音で思考が切れる。

心臓が、表面だけ熱くなる。

熱いのに、手のひらは冷たい。

冷たい手をポケットに入れて、数を重ねる。

四、八、十二、十六。

授業の終わり、先生が「無理するなよ」と声をかける。

私はうなずき、流れに合わせて体育館を出た。

廊下はワックスの匂い。

靴音をゆっくりにして、波紋が静まるのを待つ。