目を合わせるまでの距離

一時間目の体育は、見学だった。

理由を書いた紙を先生に渡すとき、私は胸の高さで視線を止めた。

先生はうなずき、何も聞かなかった。

跳び箱の音が体育館に弾む。

床の白線は安全地帯だ。

私はそこに足を揃え、数を数える。

四、八、十二。

二階の渡り廊下では上級生の女子が手を振ってくれた。

顔を上げられず、指先だけ振り返す。

目が合う手前で、心臓が一度強く跳ね、すぐに沈む。

沈んだあと、胸の中に波紋が残る。

その波紋は、しばらく消えない。

跳び箱の段がひとつ増えるたび、歓声がはねる。