最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

この物語は、「人と目を合わせるのがこわい」という気持ちを、できるだけ分かりやすく描こうと思って書きました。

主人公の灯(あかり)は“弱い”のではありません。

言葉で傷ついたあと、少しずつ回復していく途中の姿です。

物語の中で灯が使っていた方法は、どれも特別なものではありません。

よろしければ、合うものだけを持ち帰ってください。

四拍の呼吸(4-4-4):四つ吸う・四つ止める・四つ吐く

5-4-3-2-1:見える・触れる・聞こえる・におい・味を数えて落ち着く

三秒ノート:できた回だけ記録する

合図「丸」:いったん止める合図の言葉

半歩斜め:すぐ横ではなく、少し斜めに立つ安心の位置

はじまりの握手:会った最初に“ここは安全”を確かめる手の合図

三上という人物について。

彼は“悪役”として断罪するために出したわけではありません。

未熟さから人を傷つけてしまうことは、現実にもあります。

彼の「ごめん」は必要でしたが、それで過去が消えるわけではありません。

灯が選んだのは、**「わたしは、わたしの練習を続ける」**という態度でした。

これは他人の言葉に振り回されないための、小さくても強い選択です。

湊(みなと)との関係は、「助ける/助けられる」という形ではなく、距離を尊重するケアを大切にしました。

追いかけない位置、合図があれば止まる約束、名前で呼ぶ練習、短くて無理のないキス。

どれも急がないことを中心に置いています。

恋がすべてを治すわけではありませんが、安心して練習できる場所にはなります。

「揺り返し」の章を入れたのは、回復が一直線ではないからです。

うまくいった日のあとに、うまくいかない日が来ることはふつうにあります。

SNS の噂や、視線のざらつきに疲れたときは、境界線を思い出してください。

ノートの枠、懐中電灯の丸、合図の言葉。

どこまでが自分の中で、どこからが外かを自分なりに決めておくと、心が少し楽になります。

避難所という舞台は、現実の災害を軽く見る意図ではありません。

実際に支えておられる方々への敬意と、読者のみなさまの安全を願いながら、灯の出会いと練習の場として描きました。

どうか日ごろの備えも大切になさってください。

もしあなたが、今「見るのがこわい」「目を合わせるのが苦手」と感じていても、見ないことを選んで大丈夫です。

今はまだでも大丈夫です。

やってみようと思えた日に、三秒だけから始めてみてください。

できた回だけ、ノートや心の中に小さな星印をつけてください。

何度でもやり直せます。

選ぶのは、いつもあなたです。

この一冊が、あなたの毎日にとっての小さな手すりになりますように。
お読みいただき、本当にありがとうございました。