連絡事項は、来週の小テストと、体操着の名札のこと。

私は頷きだけを二回。

担任が廊下へ出ていくと、教室の空気が少し軽くなる。

椅子を引く音、プリントの擦れる音、消しゴムの匂い。

世界は音と匂いで満ちているのに、視線だけが居場所をなくす。

視線が迷子になる前に、私はノートの罫線を一本なぞった。

線は逃げない。

線は、見返しても黙ってそこにいるから。

グラウンドの旗は風に負けず、まっすぐ立っていた。

昼まで曇り、午後から雨、と朝の天気予報が言っていた。

ポケットのスマホはマナーモードのまま、折りたたみ傘をかばんにしまう。

空はまだ、雨になる手前の色だ。