目を合わせるまでの距離

家の角で立ち止まり、はじまりの握手をもう一度。

強くない圧。

離れる準備も続ける準備もできる握りかた。

「またね、灯」

「またね、みなと」

手を離したあと、私は玄関の前で三秒ノートを開く。

今日の頁の最後に線を引き、書く。

「今日:はじまりの握手/合図=手首トントン・指一本・丸・半歩斜め/“名前”=呼べた/短いキス=合図後/きもち:こわさ→安心→決意」

窓の向こうで、夜の音が薄くなる。