目を合わせるまでの距離

合図をもう一度確認する。

手首トントン――離れてOK。

指一本――深呼吸。

丸――止める。

半歩斜め――歩く位置。

それから、名前。

私は小さく呼ぶ練習を付け足す。

「……みなと」

いち、に、さん。

影を経由して、目に触れる。

湊さんは視線を逃がさず、でも追いかけずに受け止める。

「灯」

彼が呼び返す。

私の中の丸が光を強める。

「次に会う場所は、混んでないとこがいいな。ベンチがある公園とか。帰り道は端を歩く」

「うん。土曜の午前、どう?」