目を合わせるまでの距離

風が少し止んで、街灯の丸が濃くなる。

湊さんが、ためらう間をちゃんと置いてから、やわらかく言う。

「ここまで決めた上で、もう一つ、確認させて。……していい? 短くて、無理のないやつ。だめなら“丸”」

喉の奥に、昔の厚みが一瞬だけ戻る。

でも、合図がある。

選べる。

私は自分の胸に指一本を上げ、二人で四つ吸って、四つ止めて、四つ吐く。

「……いい」

私は小さく、はっきり言う。

「短くて、無理のないやつ」

湊さんは半歩斜めの位置を崩さず、ゆっくり身体の角度だけ私へ寄せる。

目は追いかけてこない。