「うん。いっしょに」

言ったあと、喉の奥の厚みがほぐれていく。

湊さんがポケットから小さなメモ紙を出し、私のノートと似た四角を指で描いた。

「急がないって、約束はそのまま。だから、最初の“合図”をちゃんと決めよう」

私は胸が少し軽くなるのを感じる。

合図があれば、夜も、昼も、境界線が引ける。

「……じゃあ、はじまりの握手、してもいい?」

「うん」

私たちは道の端で向かい合い、手のひらを一度合わせた。

強くない圧。

離れる準備も、続ける準備もできる握りかた。

トン、トン――手首じゃなく、手の内側で脈の音がやわらかく混ざる。

ここから、始める。