花火の余韻が、川風の中でまだ小さくぱちぱちしていた。

人の波がほどけて、屋台の灯りが一本ずつ細くなる。

帰り道は、歩道の端。

私と湊さんは半歩斜めの距離を守って、同じ歩幅で歩く。

胸ポケットの三秒ノートは少し膨らんで、今日の頁が温かい。

「さっきの十秒、ほんとすごかった」

湊さんが言う。

追いかけてこない声の高さ。

「……それで、もし灯がよければ、今日からは“いっしょに”って、言っていい?」

足もとのひびを安全地帯にしながら、私はうなずく。

四つ吸って、四つ止めて、四つ吐く。