朝の教室は、昨日の雨を吸った雑巾みたいに湿っていた。

出席確認の声が前から流れてくる。

私は黒板の左上を見つめ、「はい」とだけ言う。

視線はそこから動かさない。

同じ学年の女子の笑い声は平気なのに、斜め前の男子が椅子を引く音を聞くと、喉の奥がきゅっと狭くなる。

筆箱を開け、短いシャープを探すふり。

りこが小声で「深呼吸」と言った。

四つ吸って、四つ止めて、四つ吐く。

窓の外の雲は、白より少し暗い灰色。

雨はまだ、落ちてこない。

日直の声がかすれて、何度か言い直していた。

黒板の端に置かれた三角定規の影が、窓の光でじわりと伸びる。