目を合わせるまでの距離

人の流れは相変わらずで、屋台の音も混ざったまま。

なのに、胸の水位は静かに均(なら)されていく。

私はノートを胸ポケットから出し、花火の光の下で素早く書く。

「見られた秒:10.0/合図:なし/“名前”:湊(小声なし)/きもち:厚→ひらく」

欄外に、今日だけの項目を足す。

・告白:相互/“急がない”合意

・合図:丸継続/人混みは端を選ぶ

・次:十秒→自然に

湊さんが半歩斜めの位置を守ったまま、小さく言う。