目を合わせるまでの距離

大輪が上がる直前の間。

私は足もとを整え、両手を軽く握る。

四つ吸って、四つ止めて、四つ吐く。

視線を上げる。

湊さんは、眉間の影を私に差し出すみたいに、少しだけ顔を傾けた。

いち、に、さん、よん、ご、ろく、なな、はち、きゅう、じゅう。

花火の光が、影の輪郭を何度も描き直す。

そのたびに、私の目は逃げずにとどまる。

トン、トンは、指を離しても胸の内で続く。

十秒目で、私は自分の意思で視線をそっと下ろした。

呼吸は通っている。

喉の奥の固さは、もう固さじゃなくて、ただの厚みだった。