目を合わせるまでの距離

三発目、もう一度三秒。

できた。

「じゃ、五秒」

湊さんの声は、花火の間を縫う速さ。

私は四つ吸って、四つ止めて、四つ吐く。

視線を上げ――いち、に、さん、よん、ご。

電気みたいな気配はある。

でも、夜の停電みたいな真っ暗は来ない。

「ナイス。休もうか。」

彼は即座に視線を川へ落とし、私は口の中の水で喉の温度を戻す。

次の連続の打ち上げ。

湊さんが短く言う。

「最後に十秒、いけそう?」

胸の中のメトロノームが迷う。

りこのメッセージが頭の奥でうなずく――「灯が決めな」

私は自分でうなずいた。

「やる。できなかったら、丸」

「了解」