目を合わせるまでの距離

屋台の灯りのあいだを抜けると、人、人、人。肩と肩の距離が、さっき測ったより短い。

足もとで浴衣の裾が風に揺れ、綿あめの巨大な雲が横切る。

胸の中のメトロノームが一度速くなり、呼吸のはしごが一段抜けた。

視線が床を探し、見つけたのはコンクリートのひび。

そこを安全地帯にする。

5-4-3-2-1。

見えるもの

――提灯の赤、氷の旗、屋台の値札、川面の黒、社務所の白。

触れているもの

――ノートの表紙、指同士、パーカーの裾、ショルダーバッグの紐。

聞こえる音

――たこ焼きの油の音、金魚のすくいの水音、人の笑い。

匂い

――甘いシロップ、焼けたソース。