「楽しんでおいで」

私は通知をオフにし、画面を伏せた。

集合は川沿いの神社の鳥居前。

社務所の屋根に風鈴がいくつか吊られて、鳴るたびに胸の奥の温度が少し下がる。

「来た?」

背中越しに、落ち着いた声。

振り向かない。

でも、声で分かる。

天野湊さんだ。

彼は半歩斜めの位置に立ち、わざと視線を川に落としている。

「人、多かったら、裏手の細い道に回ろう。ベンチがある」

「うん」

私はうなずき、ノートをしまう。

白いテープはないけれど、紙の枠と光の丸の記憶が、今夜の境界線だ。