目が合う。

それだけが、どうしてこんなにむずかしいのだろう。

六年の春、廊下に積まれた図工の作品を取りに行った帰り、私は偶然、教室の後ろで立ち止まった。

開け放たれた窓から薄い風。

掲示物の端がかすかに揺れ、チョークの粉の匂いが漂っていた。

掃除用具入れの向こう側で、男子の笑い声が二つだけ混ざる。

「俺、柚木のことが嫌いだわ。」

乾いた声が、ほこりの匂いと一緒に耳に落ちた。

名前を呼ばれた瞬間、背中の皮膚が薄くなったみたいに、風が通り抜けた。