午後三時。社内の大きな会議室は、緊張感に包まれていた。
朱里と嵩は、来週に控えた大型クライアント向けの企画提案を、社内でリハーサルする役を任されていた。
(落ち着け……今日は大事なチャンスなんだから)
朱里は手元の資料を握りしめる。
「中谷さん、準備は?」
隣に座る嵩の声が、不思議と安心感を与えてくれる。
「はい……大丈夫です」
小さくうなずくと、嵩は目だけで「信じてるよ」と伝えるように微笑んだ。
プレゼンが始まると、二人は驚くほど息が合った。
朱里がデータを説明すれば、嵩が具体例を補足し、嵩が方針を示せば、朱里が数字で裏付ける。
まるで、背中を預け合って戦っているような感覚。
朱里はふと、自分の声がいつもより自然に出ていることに気付いた。
発表が終わると、上司が感心したように言った。
「いいコンビだな、中谷、平田。安心して任せられる」
「ありがとうございます」
朱里は頭を下げながら、心臓がどくどくと音を立てるのを感じていた。
(……“コンビ”。そんなふうに言われるなんて)
会議室を出た後、廊下ですれ違いざまに嵩が小声で言った。
「中谷さん、今日の君は本当に頼もしかったよ」
その一言で、朱里の胸は熱くなる。
「べ、別に……ただの仕事ですから」
思わず口を突いて出た言葉は、やっぱり素直じゃない。
でも、心の中では――
(大嫌いって言いたくなるくらい、ほんとは好きなんだ)
朱里は資料を抱きしめるようにして、机に戻っていった。
朱里と嵩は、来週に控えた大型クライアント向けの企画提案を、社内でリハーサルする役を任されていた。
(落ち着け……今日は大事なチャンスなんだから)
朱里は手元の資料を握りしめる。
「中谷さん、準備は?」
隣に座る嵩の声が、不思議と安心感を与えてくれる。
「はい……大丈夫です」
小さくうなずくと、嵩は目だけで「信じてるよ」と伝えるように微笑んだ。
プレゼンが始まると、二人は驚くほど息が合った。
朱里がデータを説明すれば、嵩が具体例を補足し、嵩が方針を示せば、朱里が数字で裏付ける。
まるで、背中を預け合って戦っているような感覚。
朱里はふと、自分の声がいつもより自然に出ていることに気付いた。
発表が終わると、上司が感心したように言った。
「いいコンビだな、中谷、平田。安心して任せられる」
「ありがとうございます」
朱里は頭を下げながら、心臓がどくどくと音を立てるのを感じていた。
(……“コンビ”。そんなふうに言われるなんて)
会議室を出た後、廊下ですれ違いざまに嵩が小声で言った。
「中谷さん、今日の君は本当に頼もしかったよ」
その一言で、朱里の胸は熱くなる。
「べ、別に……ただの仕事ですから」
思わず口を突いて出た言葉は、やっぱり素直じゃない。
でも、心の中では――
(大嫌いって言いたくなるくらい、ほんとは好きなんだ)
朱里は資料を抱きしめるようにして、机に戻っていった。



