朝の空気はひんやりしていた。

窓を開けると冷たい風が頬をかすめる。

制服のボタンを留める指が、少しだけ緊張で固い。

机の上には昨日のノート。

開きっぱなしの数式。

中途半端なまま置かれたペン。

そこに触れずに鞄を閉じる。

階段を下りると、母の声。

「朝ごはん、できてるわよ。」

匂いは懐かしいのに、胸は少し重い。

昨日の夜、塾で聞いた声が何度も頭をよぎる。

颯太の「約束な」という言葉。

何度思い出しても、胸の奥が温かくなる。