昇降口に彼がいた。

手を振る動きが、いつもよりゆっくりだ。

「行く?」

——「うん」

二人で校庭を出る。

風は冷たい。

日差しは、たしかに春だった。

靴底が土を押し、道の端の水たまりが、薄い空を揺らす。