まだ暗い駅前に白い息が幾つも重なる。

改札の音がせわしなく跳ね、行き先案内の文字がかすかに滲む。

手袋の中の指は硬いが、胸ポケットの付箋だけはやわらかい。

〈設問三語/マーク/星〉

何度もなぞって覚えた三行が、指先で確かな温度になる。

スマホが震えた。

〈いってらっしゃい〉

短い挨拶の中に、長い季節が入っている気がする。

私はホームの階段を上がりながら、息を深く吸って、同じだけ吐いた。