面談室を出ると、廊下に雨の匂いが流れ込んでいた。

母が私の肩を軽く叩く。

「変えないんだね」

——「うん」

短い返事なのに、全身で返した気がした。

父は「夕飯、消化のいいものにしよう」とだけ言った。

沈黙は重くない。

三人で並んで歩く廊下が、少しだけ広く見えた。