玄関を開け、部屋の灯りを点ける。

机にノートを開く。

ページの隅に、今日の敗因と、明日の一手を書き足した。

字が、まっすぐ立っている。

「大丈夫。次は上げる」。

小さくつぶやくと、さっきの歩道の灯りが胸にともったままだと気づく。

窓の外は星が少ない夜。

けれど、手の中には消えない目印がある。

明日へ向かう線は、もう引き始めていた。