川沿いの手すりに触れると、金属の冷たさが、思考の熱をいい温度に整える。

遠くで電車が橋を渡る。

音が拍に混じる。

「家だと音が気になる」と打ち明けると、「俺も」と返ってきた。

似た弱さは地図になる。

どこで迷うかが分かれば、灯りを置く場所も分かる。

黒い水面に、街の光がちいさく揺れていた。