最初の数分、言葉は要らなかった。

夜の店先が、歩道に灯を落とす。

人の声は遠い。

私は紙袋を握り直す。

今日つけた印の位置が、指先の熱で思い出される。

「英長文、だめだった」と小さく言う。

語尾は曖昧になった。

颯太はうなずくだけだった。

その簡単さが、息の整い方を教えてくれる。