コンビニの前を通る。

温かい空気が自動ドアから漏れてきて、つられて足が止まる。

「ココア、買う?」

颯太が言う。

少し迷って、うなずいた。

カップを両手で包む。

甘い匂い。

さっきまでの棘が、ほんの少し丸くなる。

「彩花は、結果より途中の粘りが強い。」

さらりと落ちる言葉。

顔を上げると、彼は前を向いたままだった。

「……覚えとく。」

湯気の向こうで、胸の奥が静かにあたたまる。