信号が青に変わる。

歩き出す足音が二つ。

並木の影が伸び、風が制服の裾を揺らす。

「今日は寄り道なしで。」

自分で言って、自分でうなずく。

颯太が横で笑う。

「了解。」

鞄の中の新しい問題集が、背中に触れている。

重いはずなのに、妙に心地いい重さ。

「次は上げる。」

小さくつぶやくと、声が冷たい空に溶けた。

誰に向けたわけでもない。

でも、私の背中を確かに押した。