午後の授業が始まっても、集中できなかった。

黒板の数字がぼやけ、先生の声が遠い。

手元のシャーペンが空を切るように動くだけ。

「結衣、大丈夫?」

隣の席の子が小声で聞く。

「うん。平気。」

そう答えたけれど、心はざわついていた。

放課後。

帰りのHRが終わると、廊下は志望校の話題でいっぱいになった。

「どこ受ける?」

「A取れたら行けるかな。」

結衣はうなずきながら、すれ違う声に心が揺れる。

自分も同じ場所にいるはずなのに、少し遠く感じた。