家に着くころには、すっかり夜になっていた。

玄関を開けると、温かい空気と台所の匂いが出迎える。

「おかえり。」

母の声が響く。

「ただいま。」

短く返すと、鞄を床に置いた。

靴を脱ぎながら、昼間の出来事が頭をよぎる。

颯太の横顔。

肩越しに覗いたページ。

何気ない会話。

それだけなのに、心が少し軽くなっていた。