駅前の本屋は日曜の午後で混んでいた。

店内に入ると、紙とインクの匂いが鼻をくすぐる。

参考書コーナーには同年代らしき学生が数人。

誰もが黙々と棚の本を手に取っていた。

颯太は背伸びをして、上段の棚を見上げる。

「これ知ってる? 解説が詳しいって評判らしい。」

「見たことない。……でも良さそう。」

ページを開くと、細かい文字がぎっしり並んでいる。

彼が肩越しに覗き込み、「ここ、見やすいな。」とつぶやく。

肩が触れる距離に少し緊張したけど、嫌ではなかった。