カフェを出ると、外の空気は少しひんやりしていた。

ビルの合間を抜ける風が、頬を優しく撫でる。

午後の日差しが淡く傾き始め、街路樹の影が長く伸びていた。

歩道にはオレンジ色の葉が舞い、足元でカサカサと音を立てる。

颯太がポケットに手を入れたまま、ふいに言った。

「このまま塾に行く? ……それとも寄り道してく?」

「寄り道?」

思わず顔を向ける。

「本屋。新しい問題集出てるかも。」

そんな理由なのに、胸の奥でわずかに期待がふくらむ。

勉強が嫌いなわけじゃない。

でも、彼と歩くそれだけで、日常が少し違って見える。