最近、勇人君の状態が変だ。毎日笑い、泣いたり、感情の起伏が激しい。
私は彼を愛してる。でも、今のままだと、愛ちゃんが怖がってしまう。
そんな状況では、私はだめだと思う。
だけど、精神病院に行って薬を貰ったりしても、その場しのぎにしかならない。
今まで我慢してきたものがこみ上げてきたのだろう。
「勇人君……」
もう頼れる人はいない。もう、私は。彼を楽にさせてあげた方がいいのだろうか。
「勇人君」
私は彼の後ろから話しかけた。
「もういいよ。私たちのことは良いよ」
そう、言った。勇人君が私たちのことを気遣ってくれていることなんて一目瞭然だ。だからこそ、私たちは別れるべきかもしれない。それがどのような別れ方なのかは置いといても。
「僕は、死んでもいいのか?」
「死んでいいよ」
今の状態の勇人君は生きているだけでしんどいと思う。
それこそ、もう死にたいくらいには。
「でも僕は、そう言うわけには行かない。僕は、僕が死んだら悲しむ人がいるんだ」
それは、YOUTUBEの登録者だろうとかは思わない。それは私であることは間違いないのだから。
「僕は、死んだら困る、困らない? ああ、分からなくなってきた」
「私は、勇人君の幸せを最優先にしてほしい。勇人君の生死を私には決められないから」
「それを言ったら僕は死ぬよ」
「寂しいけど、勇人君のことを考えたら、これが一番いい方法なのだもの」
そう、もう死んで楽になるのが一番の道だ。
勇人君には生きててほしい。だけど、こんな勇人君はもう見たくない。こんなに苦しんでいる勇人君なんて。
「もう僕は死んでもいいのか?」
「いいよ死んでも。それが勇人君の幸せだったら」
「分かった。僕は遺書を書き始める」
「うん」
そして、勇人君は死ぬ準備を始めた。遺産管理、異物整理、所謂終活だ。
その姿を見ると、いつもよりもうきうきとしている。
勇人君のYOUTUBEはもう半年くらい更新はないのだから、二年後くらいに死去報告をすればいいだろうと、勇人君は言っていた。
私は彼の決断を尊重する。自殺という行為自体を肯定するわけでは無いのだけど、でも、今の勇人君の精神状態は、確実に自死をした方が、本人的にも楽だ。
私はそんな勇人君を、微笑ましく見ているのだった。
ある日、「パパ死ぬの?」愛ちゃんが急にそう言った。
完全に忘れていたことだが、愛ちゃんは父親が自殺をするというイベントを体験することになる。
そこに関して非常に申し訳なく思う。
でも、もう止められない。私自身がその選択に協力をしているのだから。
愛ちゃんには本当のことは黙っておきたいところだが、恐らく勇人君レベルの認知度だったら、ニュースになるだろう。愛ちゃんにばれるのは嫌だなと思った。
交通事故と嘘をつくことすらできないじゃない。
そして、飯田君に電話で伝えると、「そうか」と一言しか返ってこなかった。羽田さんには最近会っていなかったのもあって、怖くて電話なんてできなかった。
そして、別の日に飯田君が勇人君と話をした。おそらく人生最後の話し合いだろう。
そうして、いよいよ、彼が死ぬ前の最後の一日がやってきた。
「いよいよだね」
「ああ、これで楽になれる」
その顔からは恐怖心など、一切感じない。
これからのことが楽しみだと思っているような顔だ。
「勇人君、良かったね」
「ああ」
そう言ってにっこりと彼は笑った。


