それからまた三年がたち、愛ちゃんも普通に歩けるようになってきた。
私の手をたどるようにして愛ちゃんがよちよちと歩いていく。
可愛い。
「ねえ、勇人君。可愛いよ」
「うん、可愛いな」
勇人君はそう言うも、どこか上の空だ。最近いつもこうだ。いつも寂しそうな眼をしている。
子供効果も中々続かなかったらしい。
やっぱり将棋から離れていた弊害が出てきたのか。
「なあ、葵。可愛いな」
「うん」
それからというもの、勇人君は熱心に子供と遊んでくれている。
だが、その姿、そして目は段々と虚無へと向かって行っている。
子どもと遊ぶのはその虚無を埋めるためだろう。
私はやっぱり心配で他ならない。
今の勇人君は前の欝々しい勇人君にもどりつつある。それを見るのが辛くもある。
勇人君には笑って欲しいのに笑顔を見せてくれない。
それが何だか寂しくなってくる。
私はそんな勇人君を見ていられない。
私は勇人君の元へと行く。
「ねえ、勇人君。これからの話をしよう」
愛が眠りについたタイミングだ。
「私、勇人君のことが本当に心配なの。勇人君、最近は愛と遊ぶことで、自分の中のもやもやを消そうとしてるんでしょ?」
「……どうだろうな」
その勇人君の声は少し寂しそうだ。
「そうだよ。最近の勇人君寂しそうだよ。将棋をやってなくて、子育てしかやることがないんでしょ?」
「……それはそうだな。僕は子育てがあるとはいえ、それは葵が主としてやってくれている。僕は最近消化不良なんだ」
「……じゃあ、これをやったら?」
私が出したのは、ゲームだ。それも対人戦が過熱しているものだ。
これは、モンスターバトルというオンラインゲームなので、顔を出さずにできるし、いろいろな戦略があり、彼なら思う存分戦えるだろう。
前回はカートレースだから戦略要素が少なかったのが悪かったのだ。
「これを極めるとかどう? もしくは……」
「やってみる。でも子育ては」
「大丈夫。それよりも私は勇人君の楽しそうな顔を見たいから。それに、勇人君はなんやかんや言って子育てもしてくれるでしょ」
「……そうだな」
そう、普通なら夫という物は仕事をするものだ。
だが、勇人君が常に家にいるおかげでだいぶ楽させてもらっているのだ。
それに勇人君の将棋資産があるし。
「それにこれがダメでも、今度は他のゲームもあるし、小説書くのもボカロ作るのもありだよ。簡単じゃないけど、趣味としていいんじゃない?」
「……かも」
勇人君は小さく呟き、早速ゲームを開始する。
早速モンスターそれぞれの特性や、能力値を調べて、固有特殊能力を調べて、バトルwpやっている。
これで、とりあえず勇人君は何とかなるだろう。
その後、勇人君は色々と新しいことに挑むことになった。
その顔は結構満足しているような感じがした。
それを見て少しだけ安心する私がいる。
勇人君が子育てをあまり助けてくれなくはなったけど、それより勇人君が復活したのがうれしい。
あれから毎日ゲームの勝ち方を模索して、しかもYOUTUBEのための動画も持っている。
うん、やっぱり趣味という物がないとね。
その間に私は子育てに熱中しよっと。
そして、勇人君のチャンネルはあっという間に人気チャンネルになっていった。
登録者数が指数関数的に増えて行った。その間に別のゲームにも嗜好を広げていき、あらゆるゲームで無双する人としてネット上で有名な人になった。
それはものの三年で登録者数12万人まで行くほどだ。
そして小説やボカロも少しづつ人気になって行く。
「勇人君はすごいね。ゲームもできるなんて」
「そりゃ、相手の行動を予測したらPvsPなんて簡単だからな」
そう、ふふんと笑う彼は少し楽しそうだった。
「まあでも、将棋よりは面白くはないんだけどな」
「将棋よりも?」
「ああ、運が作用してるからな。将棋よりも簡単には勝てないからそこは今の僕にはいいところだ。だけど。やっぱりあの時の将棋の情熱は取り返せない」
そう、悲しげに言う彼。
元気になったのは外見だけか。
「じゃあ、ボカロとか小説は」
「そっちの方が楽しいかな。勝負じゃないから何とかなる。とはいえ、僕にはそこまでの才能はなさそうだけど」
そう言って勇人君は小説投稿サイトのデータを見せて来る。
人気にはなって来ているが、それでもまだまだランキング内とかには入ってこない。
「そう……でも、まだ始めたばかりだし、まだまだなんじゃない」
「そうだね」
勇人君は再び、音楽を作り始める。それを見て私は一言「がんばれ」と言った。


