「勇人君、勇人君!!」
私は勇人君のもとに駆け寄る。
私たちはあれから幾度も幾度も性行為を繰り返した。
勿論子作りのためだ。
そして、昨日それが報われたのだ。
「これ見て」
そう、勇人君に見せたのは妊娠検査薬だ。
「陽性。子どもが出来たの」
「子どもが?」
そう言って勇人君はそっと私のお腹を見る。
「まだ、影はないけどね」
お腹は膨れてはいない。
膨れだすのはおよそ二十週目くらいからだ。
「でも、いるよ。子どもが」
「そうか」
勇人君は感激めいた顔をしている。
よほどうれしいのだろうか。
「俺と、葵の子どもか」
「うん、そこ大事だよね」
だって、子どもは作品。そう言ってしまったら賛否両論あると思うが。
それでも、愛の結晶と呼ぶことには、不都合がないだろうし。
「勇人君には頑張ってもらわないといけないかもしれないけど」
「ああ、俺頑張るよ」
そう言って勇人君はぎゅっとこぶしを握り締めた。
勇人君、最近元気出て来たな。そう思う。
そして私たちは妊娠生活の準備を進める。
正直なめていた部分もある。本当にしんどいし、栄養も取らなきゃならないし。
「本当に舐めてた」
そう呟く。
たぶんホルモンバランスがおかしくなってるんだなと思う。
色々とイライラしてしまう。
それに、食事も気を付けなきゃだめだし、運動量も制限される。
とにかくいろいろと中の赤ん坊に気を遣わなきゃいけないのだ。
勿論自分の子どもだから嫌とかではないが、それでもしんどい。
それに、こんなんじゃダメなのに、何のやる気も起きない。
しかも、勇人君もすべて手伝ってくれるわけではない。
そのことに対し、「なんで手伝ってくれないのよ!」とか、「あー、洗濯物取り込んで。私だるいから」とか、本来優しく言えばいいのに、冷たく当たってしまう。
そんな自分がたびたび嫌になる。
勇人君には本当に申し訳なく思っている。
勇人君はしっかりとやってくれているのに、ついつい当たってしまうのだ。
でも、お腹の中に新しい命が段々と育っていくのを見てると嬉しくなる。
なんだか不思議だなと思う。だって、お腹の中で命を作っ得tるんだもん。私のお腹の中に新しい命が芽吹いて来てるんだもん。
そんな中、勇人君は少し小説を書き始めた。
天才である彼は、小説でも天才性を発揮できるなんてことも無く、苦戦している。
そんな彼を見ると愛おしいなと思う。
楽しいかどうか聞いても、分からないと答えてくる。でも着の紛れになるならそれはいいことだ。
そしてこの時には渡部という棋士のことを呟く人はほとんどいなくなった。
もう、勇人君は渡部八冠じゃない。ただの渡部勇人だ。
そこが大事なのだ。
みんな忘れている。勇人君も一人の人間だという事を。
「きゃ」
お腹の中で、衝撃を感じた。
これって、
「勇人君、勇人君」
私は急いで勇人君を呼ぶ。
何かを手伝って欲しいわけではない。
「おなか動いてる」
そう伝えたいのだ。
走ってこっちに来た勇人君はそれを聞き、私のお腹をさする。
「本当だ」
勇人君はそう呟いた。
「元気だな」
「ええ、そうね」
元気だ。元気すぎて、大変だ。
でも、元気じゃないと困る。私たちを困らせるような暴れん坊になってもらわないと。
だって、私はそんな子供生活を――恐らく部分的に勇人君も――送れなかったのだから。
そして、ついに待ち望んだその日が来た。
私達はおおよそ十ヶ月間、この日のために頑張ってきていたと言っても過言ではない。
この日まで、お腹の子どもを守り切ったんだ、と思うと幸せになる。
段々と陣痛が近くなってくる。
今の私の状態は出産を待つ状態だ。
ぎりぎりまで待ち、そこから病院に向かう。
それ待ちだ。勇人君は車を運転できないため、お父さんを呼んでいる。
タクシー代わりにするのは申し訳ないが、まさか陣痛も地で電車やバスで行くわけには行かない。
そして、その時が来た。
私と勇人君はお父さんの車に乗り、病院へと向かった。
ここからが勝負だ。
暫く痛い時間が続く。
子どもがまさに出ようとしているのだ。
その地獄の時間は長い。勇人君のような、出産の痛みを伴わない男を逆切れでムカついてしまう。
でも、子どもには腹など立たない。
この痛みは必要な痛みだからしんどく辛い地獄だけれども、耐えられる。
私は子どものために頑張るのだ。
そして、助産師さんに応援されながら、痛みに耐え続ける事暫く。
「おぎゃあ」
ついに、子どもが私の体の中から、飛び出た。
「はあはあ」
まだ痛みはひどく、疲れ切っている。だけど、赤ん坊を見ると、ほっとしたと同時に、可愛い。そんな気持ちが体中を取り囲んだ。
「勇人君……」
「ああ、よく頑張ったな」
勇人君は私を見てそう言ってくれた。
「これが俺の子か」
「うん。かわいいね」
「うん可愛い」
勇人君の顔は、朗らかで、本心でそう思ってるかのような顔だ。
その後しばらく入院して、その後赤ん坊と一緒に家に帰る。
赤ちゃんは女だった。生まれる前から名前は決めていた。愛ちゃんだ。
その後、私達は暫く一緒に子どもを愛でる。
慣れない事ばかりだし、赤ん坊は目を話したら死ぬリスクもある。
それに、夜泣きも酷く、ストレスがどんどんと溜まっていく。
しかし、勇人君が慣れないながらも手伝ってくれるので、ありがたい。
赤ちゃんとは何て弱い物なのだろうか。
でも、本当に可愛くてたまらない。
私達は幸せだと思える。
これを見ると、世の独身女性、独身男性は損をしていると思う。
こんなにも可愛らしい子を育てる機会を得ないなんて。
大変だけど、やりがいのある仕事だ。
この子の成長する姿を見られる。それだけで幸せな気分になれるのだ。
私は勇人君のもとに駆け寄る。
私たちはあれから幾度も幾度も性行為を繰り返した。
勿論子作りのためだ。
そして、昨日それが報われたのだ。
「これ見て」
そう、勇人君に見せたのは妊娠検査薬だ。
「陽性。子どもが出来たの」
「子どもが?」
そう言って勇人君はそっと私のお腹を見る。
「まだ、影はないけどね」
お腹は膨れてはいない。
膨れだすのはおよそ二十週目くらいからだ。
「でも、いるよ。子どもが」
「そうか」
勇人君は感激めいた顔をしている。
よほどうれしいのだろうか。
「俺と、葵の子どもか」
「うん、そこ大事だよね」
だって、子どもは作品。そう言ってしまったら賛否両論あると思うが。
それでも、愛の結晶と呼ぶことには、不都合がないだろうし。
「勇人君には頑張ってもらわないといけないかもしれないけど」
「ああ、俺頑張るよ」
そう言って勇人君はぎゅっとこぶしを握り締めた。
勇人君、最近元気出て来たな。そう思う。
そして私たちは妊娠生活の準備を進める。
正直なめていた部分もある。本当にしんどいし、栄養も取らなきゃならないし。
「本当に舐めてた」
そう呟く。
たぶんホルモンバランスがおかしくなってるんだなと思う。
色々とイライラしてしまう。
それに、食事も気を付けなきゃだめだし、運動量も制限される。
とにかくいろいろと中の赤ん坊に気を遣わなきゃいけないのだ。
勿論自分の子どもだから嫌とかではないが、それでもしんどい。
それに、こんなんじゃダメなのに、何のやる気も起きない。
しかも、勇人君もすべて手伝ってくれるわけではない。
そのことに対し、「なんで手伝ってくれないのよ!」とか、「あー、洗濯物取り込んで。私だるいから」とか、本来優しく言えばいいのに、冷たく当たってしまう。
そんな自分がたびたび嫌になる。
勇人君には本当に申し訳なく思っている。
勇人君はしっかりとやってくれているのに、ついつい当たってしまうのだ。
でも、お腹の中に新しい命が段々と育っていくのを見てると嬉しくなる。
なんだか不思議だなと思う。だって、お腹の中で命を作っ得tるんだもん。私のお腹の中に新しい命が芽吹いて来てるんだもん。
そんな中、勇人君は少し小説を書き始めた。
天才である彼は、小説でも天才性を発揮できるなんてことも無く、苦戦している。
そんな彼を見ると愛おしいなと思う。
楽しいかどうか聞いても、分からないと答えてくる。でも着の紛れになるならそれはいいことだ。
そしてこの時には渡部という棋士のことを呟く人はほとんどいなくなった。
もう、勇人君は渡部八冠じゃない。ただの渡部勇人だ。
そこが大事なのだ。
みんな忘れている。勇人君も一人の人間だという事を。
「きゃ」
お腹の中で、衝撃を感じた。
これって、
「勇人君、勇人君」
私は急いで勇人君を呼ぶ。
何かを手伝って欲しいわけではない。
「おなか動いてる」
そう伝えたいのだ。
走ってこっちに来た勇人君はそれを聞き、私のお腹をさする。
「本当だ」
勇人君はそう呟いた。
「元気だな」
「ええ、そうね」
元気だ。元気すぎて、大変だ。
でも、元気じゃないと困る。私たちを困らせるような暴れん坊になってもらわないと。
だって、私はそんな子供生活を――恐らく部分的に勇人君も――送れなかったのだから。
そして、ついに待ち望んだその日が来た。
私達はおおよそ十ヶ月間、この日のために頑張ってきていたと言っても過言ではない。
この日まで、お腹の子どもを守り切ったんだ、と思うと幸せになる。
段々と陣痛が近くなってくる。
今の私の状態は出産を待つ状態だ。
ぎりぎりまで待ち、そこから病院に向かう。
それ待ちだ。勇人君は車を運転できないため、お父さんを呼んでいる。
タクシー代わりにするのは申し訳ないが、まさか陣痛も地で電車やバスで行くわけには行かない。
そして、その時が来た。
私と勇人君はお父さんの車に乗り、病院へと向かった。
ここからが勝負だ。
暫く痛い時間が続く。
子どもがまさに出ようとしているのだ。
その地獄の時間は長い。勇人君のような、出産の痛みを伴わない男を逆切れでムカついてしまう。
でも、子どもには腹など立たない。
この痛みは必要な痛みだからしんどく辛い地獄だけれども、耐えられる。
私は子どものために頑張るのだ。
そして、助産師さんに応援されながら、痛みに耐え続ける事暫く。
「おぎゃあ」
ついに、子どもが私の体の中から、飛び出た。
「はあはあ」
まだ痛みはひどく、疲れ切っている。だけど、赤ん坊を見ると、ほっとしたと同時に、可愛い。そんな気持ちが体中を取り囲んだ。
「勇人君……」
「ああ、よく頑張ったな」
勇人君は私を見てそう言ってくれた。
「これが俺の子か」
「うん。かわいいね」
「うん可愛い」
勇人君の顔は、朗らかで、本心でそう思ってるかのような顔だ。
その後しばらく入院して、その後赤ん坊と一緒に家に帰る。
赤ちゃんは女だった。生まれる前から名前は決めていた。愛ちゃんだ。
その後、私達は暫く一緒に子どもを愛でる。
慣れない事ばかりだし、赤ん坊は目を話したら死ぬリスクもある。
それに、夜泣きも酷く、ストレスがどんどんと溜まっていく。
しかし、勇人君が慣れないながらも手伝ってくれるので、ありがたい。
赤ちゃんとは何て弱い物なのだろうか。
でも、本当に可愛くてたまらない。
私達は幸せだと思える。
これを見ると、世の独身女性、独身男性は損をしていると思う。
こんなにも可愛らしい子を育てる機会を得ないなんて。
大変だけど、やりがいのある仕事だ。
この子の成長する姿を見られる。それだけで幸せな気分になれるのだ。


