【試用】信用スコア政策

「痛っ……」

 いつもの河川敷。僕はヒカルが餌を食べているのを横目に肩や足のマッサージをしていた。二週間のテストから解放されたことで箍が外れたのか、四人は帰り道にある公園でプロレスごっこを始めた。僕は巻き込まれ、体のあちこちを痛めることとなった。いくらか消毒が必要なほどの擦り傷ができてしまった。それでいて、コンクリートのところで相変わらず悪質ないじめを働くのだから勘弁願いたい。もともと擦った部分を再度擦ることになり、傷が悪化してしまった。

 それも全て信用スコア582ポイントで彼らのポイントを大きく上回ってしまったのが問題だった。彼らの中で一番高いポイントでも552ポイント。僕の方が30ポイント高かった。自分たちの中では格下だと思ってる奴が信用スコアという社会クラスで格上だと示されたのが大いに気に食わなかったのだろう。

 正直、彼らが僕を格下だと思っているように僕は彼らを格下だと思っている。今回の信用スコアで僕が正しかったことが証明された。それなのに、現実を受け止めることができないで『暴力』という肉体的力に頼るのはどうかしている。

 バカにつける薬はない。あと半年我慢をする以外の方法はなさそうだ。

 痛めた体はマッサージにより少しはマシになった。擦り傷に関しては自然治癒に任せるしかない。リラックスできる入浴で憂鬱な気分になるのが嫌なところだ。

 河川の音色に清涼な風、満足するヒカルの様子に少し心癒される。残った鬱憤を『カルぺ・ディエム』で晴らそうとポケットに入ったスマホを取り出した。ログインし、溜まっていたスタミナを使って、他のプレイヤーと通信対戦を行う。負けて鬱憤が溜まってしまわないように自分よりも格下の者と戦うようにした。ダメージ一つ負わせられず、相手を一掃する様子に快感を抱く。メタ認知的に人のことは言えないなと思いつつも、今は棚にあげることにした。

 スタミナを全て使い果たしたところでフレンドの欄を覗く。RIGのランクを見ると昨日よりも五つ高くなっていた。凄まじい成長スピードだ。もしかすると今頃は先月クリアした高難易度クエストを周回できるようになっているかもしれない。

 彼に負けないくらい自分も強くならないとな。そう思いつつ、アプリを終了しようとした。その際、まだ終了していなかった『マイクレジット』のアプリに目が止まった。

 刹那、僕は目を剥いた。

『カルぺ・ディエム』のアプリを切り忘れ、『マイクレジット』へと移行する。

 僕は『マイクレジット』に書かれた信用スコアを舐めるように見回した。どこをどう見ても自分が見ている画面が変わることはなかった。

 どうやら、本当みたいだ。僕は自分の心臓が高鳴るのを感じていた。

 それほどまでに自分の目に映る信用スコア『602』と言う数字は異彩を放っていた。