月日は経ち、約二ヶ月の時が過ぎた。
街の木は軒並み裸になり、質素な光景となっている。それは冬の始まりを告げていた。
そして、今日はクリスマス。僕のせいでできていなかったハロウィンのお疲れ様会はクリスマス会と合同で『静の家』で行われることとなった。
静と和解してから数日間は僕にとっては大変な日々だった。家族、先生に謝罪。僕が犯したトラブルへの対応。僕が招いた事件は許されるはずもなく、先生や家族からはこっ酷く叱られた。ただ、それでも頑張れたのは静や恵たちが励ましてくれたり、助けてくれたりしたからだ。
そして、全てのことが解消し、現在は穏やかな日々を送っている。加藤たちからの僕のいじめはすっかりとなくなり、恵グループに加わって楽しい日々を過ごしていた。
静の件に関しては、最初はみんなの話題となっていたものの、喉元過ぎれば熱さ忘れるとでもいうべきか自然に消滅してしまった。もしかすると、まだ一部の生徒の間では噂されているかもしれないが、静は気にしていない様子だ。
和解して以降、静とはほぼ毎日同じ時を過ごしている。彼氏彼女という関係ではないが、親友として仲睦まじく過ごしていると言った感じだ。
互いのことをよく知っていこうと趣味嗜好や過去話などを赤裸々に話したりしていた。僕からの非道を受けてもなお、自分のことを明かしてくれる静は本当に寛容で優しい人だと思った。だからこそ、もう二度と彼女を裏切らないと僕は自分の心に誓った。
彼女と話す中で僕が一番驚いたことがある。
「ねえ、亮太くん。レアアイテムゲットしたよ!」
隣に座る静は嬉しそうに瞳を輝かせながらスマホの画面を向けた。『カルペ・ディエム』で行われている期間限定クエストのボスが稀に落とすレアアイテムが報酬の一覧に載っているのが見えた。
「良いなー、僕はまだ一回も落ちてないんだよね」
「ふっふーん。良いでしょ?」
憎たらしい不敵な笑みを僕に浮かべる。静にそんなことをされても腹が立つことはなかった。日々過ごす中で、彼女は今まで見せなかった表情をするようになった。これはきっと、僕たちの関係が良好であることを示してくれているのだと僕は勝手に解釈している。
静は数ヶ月前から『カルぺ・ディエム』を始めていたらしい。それに関しては驚くことはなかった。むしろ、腑に落ちたと言った感じだ。アミューズメントパークで僕が『カルペ・ディエム』をやっていた時に真剣に眺めていた理由に合点がいったのだ。驚いたのは彼女のプレイしているユーザーネームが『RIG』であったことだ。僕はどうやら、カルペ・ディエムのチャットでずっと静と話していたのだ。静いわく、いじめられていた僕を少しでも励ませればと思って、『カルぺ・ディエム』を始めて僕にチャットで話をかけてくれたようだ。僕が一回、静に対してプレイしている様子を見せた際にユーザー名とランクを知って、検索からフレンド申請したらしい。それは低いランクの『RIG』から申請が飛んできたわけだ。RIGとは会話をたくさんしてきた。いじめられていた時の唯一の友達だったため、愚痴やら卑猥な話やらと自分の鬱憤を話していたのだが、まさか全て静が聞いていたとは。明かされた時はとてつもないほどの羞恥心に駆られた。
「なあ、亮太。このボスはどう倒せばいい?」
静と話していると隣にいる肇が僕を呼ぶ。僕は彼に体を寄せるとボスの弱点について話し始めた。
「なるほどな。新田の説明はわかりやすくていい。これは静が頼るのも分かるな」
肇はそんなことを言いながら僕の説明した通り操作を始める。
「ねえねえ見て。ヒカルちゃん、どこに行ったかと思ったら、テーブルの下でくつろいでいたよ」
肇の隣に座る燈が僕たちに顔を向けてそう言うと、再びテーブルの下へと顔を潜らせる。僕も見てみると確かにヒカルがテーブルの下でぐっすりと眠っていた。みんながいる場所が落ち着くみたいだ。
「はいはーい、焼きそばできたよ!」
仲良く団欒しているとキッチンにいた恵がテーブルにやってくる。大きな皿の上に大量の焼きそばが盛られている。暖かそうな湯気が漂い、ソースの匂いが鼻腔をくすぐる。それによって、口から思わず唾液が分泌された。
「よっしゃー。じゃあ準備もできたことだし、乾杯と行きますか」
恵は静と燈の間に座ると目の前にあったコップを手にもつ。それに合わせて、僕たちも目の前のコップを手に持った。
「ねえ、見て。雪だよ!」
すると、静がみんなに向けて声を上げると窓を指さす。テンションが上がっている様子で声は上ずっていた。振り返ると確かに白い粒のようなものが見える。どうやら、天気までもが僕たちを祝福してくれているようだった。
「何年ぶりかのホワイトクリスマスだね! 私もテンション上がってきた! それでは、ハロウィンお疲れ様会とハッピーメリークリスマスと言うことで、かんぱーーい!!」
「「「「乾杯!!!!」」」」
コップを真ん中に集め、全員で一斉にガラスを鳴らす。友達同士でクリスマスに集まって、パーティーをするなんて僕の人生では初めてのことだった。
きっと今が一番人生で輝いている。今だけではない。これからもずっと輝き続けるだろう。だって、『信用』できる大切な友達ができたのだから。
だからこそ、『遺書』として書いた僕の長い長い物語は破棄することなく、『思い出』として採っておこうと思う。
僕の小さな小さな物語として。
街の木は軒並み裸になり、質素な光景となっている。それは冬の始まりを告げていた。
そして、今日はクリスマス。僕のせいでできていなかったハロウィンのお疲れ様会はクリスマス会と合同で『静の家』で行われることとなった。
静と和解してから数日間は僕にとっては大変な日々だった。家族、先生に謝罪。僕が犯したトラブルへの対応。僕が招いた事件は許されるはずもなく、先生や家族からはこっ酷く叱られた。ただ、それでも頑張れたのは静や恵たちが励ましてくれたり、助けてくれたりしたからだ。
そして、全てのことが解消し、現在は穏やかな日々を送っている。加藤たちからの僕のいじめはすっかりとなくなり、恵グループに加わって楽しい日々を過ごしていた。
静の件に関しては、最初はみんなの話題となっていたものの、喉元過ぎれば熱さ忘れるとでもいうべきか自然に消滅してしまった。もしかすると、まだ一部の生徒の間では噂されているかもしれないが、静は気にしていない様子だ。
和解して以降、静とはほぼ毎日同じ時を過ごしている。彼氏彼女という関係ではないが、親友として仲睦まじく過ごしていると言った感じだ。
互いのことをよく知っていこうと趣味嗜好や過去話などを赤裸々に話したりしていた。僕からの非道を受けてもなお、自分のことを明かしてくれる静は本当に寛容で優しい人だと思った。だからこそ、もう二度と彼女を裏切らないと僕は自分の心に誓った。
彼女と話す中で僕が一番驚いたことがある。
「ねえ、亮太くん。レアアイテムゲットしたよ!」
隣に座る静は嬉しそうに瞳を輝かせながらスマホの画面を向けた。『カルペ・ディエム』で行われている期間限定クエストのボスが稀に落とすレアアイテムが報酬の一覧に載っているのが見えた。
「良いなー、僕はまだ一回も落ちてないんだよね」
「ふっふーん。良いでしょ?」
憎たらしい不敵な笑みを僕に浮かべる。静にそんなことをされても腹が立つことはなかった。日々過ごす中で、彼女は今まで見せなかった表情をするようになった。これはきっと、僕たちの関係が良好であることを示してくれているのだと僕は勝手に解釈している。
静は数ヶ月前から『カルぺ・ディエム』を始めていたらしい。それに関しては驚くことはなかった。むしろ、腑に落ちたと言った感じだ。アミューズメントパークで僕が『カルペ・ディエム』をやっていた時に真剣に眺めていた理由に合点がいったのだ。驚いたのは彼女のプレイしているユーザーネームが『RIG』であったことだ。僕はどうやら、カルペ・ディエムのチャットでずっと静と話していたのだ。静いわく、いじめられていた僕を少しでも励ませればと思って、『カルぺ・ディエム』を始めて僕にチャットで話をかけてくれたようだ。僕が一回、静に対してプレイしている様子を見せた際にユーザー名とランクを知って、検索からフレンド申請したらしい。それは低いランクの『RIG』から申請が飛んできたわけだ。RIGとは会話をたくさんしてきた。いじめられていた時の唯一の友達だったため、愚痴やら卑猥な話やらと自分の鬱憤を話していたのだが、まさか全て静が聞いていたとは。明かされた時はとてつもないほどの羞恥心に駆られた。
「なあ、亮太。このボスはどう倒せばいい?」
静と話していると隣にいる肇が僕を呼ぶ。僕は彼に体を寄せるとボスの弱点について話し始めた。
「なるほどな。新田の説明はわかりやすくていい。これは静が頼るのも分かるな」
肇はそんなことを言いながら僕の説明した通り操作を始める。
「ねえねえ見て。ヒカルちゃん、どこに行ったかと思ったら、テーブルの下でくつろいでいたよ」
肇の隣に座る燈が僕たちに顔を向けてそう言うと、再びテーブルの下へと顔を潜らせる。僕も見てみると確かにヒカルがテーブルの下でぐっすりと眠っていた。みんながいる場所が落ち着くみたいだ。
「はいはーい、焼きそばできたよ!」
仲良く団欒しているとキッチンにいた恵がテーブルにやってくる。大きな皿の上に大量の焼きそばが盛られている。暖かそうな湯気が漂い、ソースの匂いが鼻腔をくすぐる。それによって、口から思わず唾液が分泌された。
「よっしゃー。じゃあ準備もできたことだし、乾杯と行きますか」
恵は静と燈の間に座ると目の前にあったコップを手にもつ。それに合わせて、僕たちも目の前のコップを手に持った。
「ねえ、見て。雪だよ!」
すると、静がみんなに向けて声を上げると窓を指さす。テンションが上がっている様子で声は上ずっていた。振り返ると確かに白い粒のようなものが見える。どうやら、天気までもが僕たちを祝福してくれているようだった。
「何年ぶりかのホワイトクリスマスだね! 私もテンション上がってきた! それでは、ハロウィンお疲れ様会とハッピーメリークリスマスと言うことで、かんぱーーい!!」
「「「「乾杯!!!!」」」」
コップを真ん中に集め、全員で一斉にガラスを鳴らす。友達同士でクリスマスに集まって、パーティーをするなんて僕の人生では初めてのことだった。
きっと今が一番人生で輝いている。今だけではない。これからもずっと輝き続けるだろう。だって、『信用』できる大切な友達ができたのだから。
だからこそ、『遺書』として書いた僕の長い長い物語は破棄することなく、『思い出』として採っておこうと思う。
僕の小さな小さな物語として。



