【試用】信用スコア政策

 夜、デパートで買い物を終えた僕は河川敷の方へと足を運んでいた。

 今日はまだ、ヒカルへの餌やりができていない状態だった。いつものように道路を歩き、彼女のいる河川敷へと向かう。

 歩いている間、僕はずっと滝森さんのことについて考えてしまっていた。

 鬼頭の発言は本当にタイミングの悪いものだった。いや、逆かもしれない。滝森さんが打ち明ける前に言ってくれたので、二人の間に取り返しのつかないキズを生むことを避けることができた。

 ただ、滝森さんにとっては絶対に言われたくなかった一言だっただろう。二人の間にキズができなかったとしても、滝森さん単体でのキズは大きく深いものに違いない。

 おそらく、このまま偽り続けることが最善の手であろう。嘘も貫くことができれば、真実になる。弱い存在である滝森さんが強くあり続けることで、強い存在であると錯覚させる。

 今行っていることを継続していけばいい。何も難しいことはない。

 だが、きっと滝森さんの中では、それは許せないことなのだろう。僕に打ち明けた時の情景を思い出せば、明らかなことだ。

 滝森さんの秘密を打ち明けてもなお、二人の間にキズをつけず、穏便に済ませる方法。

 考えてみたが、一向に答えは出てこない。気がつけば、ヒカルのいる河川敷へと辿り着いていた。

 夜の河川敷は真っ暗だった。街灯に照らされていないため、足元がおぼつかない。端からの街頭、及び月の光が川の水面に反響しているため、それを頼りに自分の位置を探っていく。乏しいものではあるが、川のせせらぎも場所を探るためのヒントになる。

 秋の夜の川辺は想像以上に寒かった。日中は暖かかったため、あまり着こまなかったのだが、見積もりが甘かったみたいだ。

 両腕で体を包み、寒さを軽減させる。橋の下に行くと水面の光がなくなってしまったため足場がわからなくなる。そのため、スマホのライト機能を使う羽目になり、軽減させた寒さは元の状態へと戻った。

 毛布を買ってあげたのは正解だった。段ボールだけでは、この寒さに耐えることは難しいだろう。これから冬場になるから、もう少し寒さ対策を施してあげるべきか。

 ライトを照らしながら、ヒカルのいる段ボールの方へと歩いていった。

 それにしても、やけに静かだ。聞こえてくるのはせせらぎの音と稀に橋を渡る車の音。ヒカルはぐっすり眠っているのか、一切の鳴き声を出さない。

 やがて、ライトの光のなかに段ボールの姿が映し出される。眠っていたら、申し訳ないなと思いつつも、段ボールの中に光を当てた。

「ヒカル……」

 中を覗くと僕は思わず、そう呟いてしまった。

 段ボールの中には、ヒカルの姿はなく、ただ先週購入した毛布が佇んでいるのみであった。呆気に取られてもなお、秋の冷風の寒さは治まることはなかった。