「ただいまー」
買い物を終え、鬼頭の家へとやってきた。一軒家の二階建ての住まい。外見は僕の住むいえとあまり変わりないが、庭に咲くコスモスやナデシコなど秋の花が華々しく咲いていた。『庭の手入れ』や『仮装衣装を手作り』するところから鬼頭家は凝り性が多いのだと思わされる。
「お邪魔します」
鬼頭に続くように玄関に入り、靴を脱ぐ。置かれた靴の中には、諏訪さんのや庄司の靴が見られた。最近はよく行動する仲であり、見慣れた靴だったためすぐに分かった。
「おかえりなさい。あら、新しい友達?」
邪魔にならないように靴の配置を整えていると奥の方から女性の声が聞こえた。見ると、若い女性の姿があった。薄茶色のポニーテールにパーカーに長ズボンとラフな格好をしている。鬼頭の母親かと思われるが、高校生を持つ母親にしては、若く見える。年相応に見えない美人母親といったところか。
「まあ、そんなところ。ハロウィンパーティに参加してくれることになった新田くん。今日から一週間お手伝いしてくれるらしい」
鬼頭が僕へと手を向けて言う。予定がないって行っただけで、一週間お手伝いするとまでは言っていなかったのだが、これからお世話になる人の母親に伝わってしまっては弁解のしようもない。
「いらっしゃい、新田くん。ごめんなさいね、色々とご迷惑をおかけして」
鬼頭の母は僕の持っているビニール袋に目線を向けながら申し訳なさそうに言った。先ほどデパートで購入した商品は全て僕が持っていた。社会クラス6の特権で浮いた金額も全て装飾の購入に使ったため、多くの品物を持たされる結果となった。
「これ、予算内で購入できたの。予算外のお金は恵の貯金から出るのは忘れていないわよね?」
「大丈夫、大丈夫。新田、私の部屋に行くわよ」
そう言って、鬼頭は近くにあった階段へと登っていく。僕は玄関に上がると母親に一礼をして同じように階段へと上がった。彼女はにこやかな表情を僕に向ける。
階段を上がり終えると、四つの扉が見えた。その中の一つの扉を鬼頭は開ける。扉には親切に『恵』と書かれた看板が吊るされている。
「新田くん、ヤッホー」
「よく来てくれたな」
部屋に入ると、諏訪さんと庄司が僕に向かって明るく挨拶してくれた。諏訪さんの笑顔はいつ見ても惚れるほど太陽のように眩しかった。
二人は部屋の真ん中に置かれたテーブルに向かい合うように座っていた。テーブルの上には折り紙やハサミ、ペンなどが置かれている。また、折り紙で作られたパンプキンなどのハロウィンを代表するキャラクターが並べられている。二人は折り紙を使って、これを作っていたようだ。
テーブルからさらに奥には、鬼頭の勉強机があった。そこにはミシンが置かれている。おそらく鬼頭はあそこに座って、衣装作りに励んでいるようだ。
「ちょっといない間にたくさん作ってくれたね」
「ようやくコツを掴んできたからな。今置かれているやつを作るならお手の門だよ」
「頼もしいね。よっしゃ! 私もまた本腰を入れるとするかな。じゃあ、新田。荷物置いたら、肇にメジャーで身体測定してもらって」
「うん、了解」
僕はテーブルの横に買った荷物を置いた。その間に庄司が鬼頭からメジャーを受け取り僕の元へとやってくる。
「残念だったな。俺が測る役で」
「別に誰でも構わないよ」
「強がるなって。滝森とかがいてくれたら良かったな」
庄司の言葉に僕は口籠る。それは、庄司か滝森さんのどちらに図ってもらいたいかと聞かれれば、即答で滝森さんと答えるだろう。
庄司はメジャーを引っ張ると僕の胸部、腹部、上半身から下半身にかけての長さを図っていった。
僕は背筋を伸ばしつつ、邪魔にならないようにぼーっと目の前を見ていた。
ベランダに伝わる窓は網状のカーテンで薄く遮られている。カーテンをつける部分にハンガーが吊るされており、ハンガーには仮装と思しき衣装がかけられていた。
右から順にキョンシー、ドラキュラ、ポリス、そして魔女といった感じだ。
「これ、気になる? ちなみに静のはどれだと思う?」
衣装を見ていた僕に対して、鬼頭が不敵な笑みを浮かべて僕へと問いかける。
「魔女かな」
「おおー、正解」
鬼頭のテーブルから一番近くにあったので言ってみたのだが、正解してしまったみたいだ。滝森さんの衣装に関して、手抜きはなく作成したと言っていたが、僕からすれば全てが同じくらい高いクオリティで作られていた。
「見た目はどう? 男のあんたなら惚れそう?」
「それは、まあ……」
滝森さんが着るなら、言うまでもなく惚れるだろう。それにしても、ソシャゲのしすぎか魔女にしては露出が少ないと思ってしまった。長袖の上部に、ミニスカートではあるもののソックスが長いため、腿が少し露出する程度だろう。
「本当はもう少し、肩の部分の布部を切って、マントつけるみたいな感じにしたかったんだけど、子供向けのハロウィンだし、最近肌寒くなってきたからお預けにしたの。まあ、終わってから、その辺は試そうと思うわ。新田には絶対に見せないけどね」
鬼頭は衣装のプレゼンを僕にしながら、人知れず妄想を膨らませていた。
「ほい、測定完了。もう楽にしていいぞ」
二人で話している間に身体測定は無事終了した。
「それにしても、これ全部、鬼頭さんが作ったの?」
「まあね」
鬼頭は僕の身体情報が記入されたメモ帳を庄司から受け取りつつ、応答する。
「去年も開催してたから、その際にキョンシーとポリスを。今年はドラキュラと魔女を作ったのさ。あとは、あんたの着る『死神』だけ」
「僕は死神なんだ」
「残り一週間だからね。一番手軽そうなものを選ばせていただきました。いいでしょ、どうせ新田が着るんだし」
僕は鬼頭の中では、かなり雑な扱いを受けているようだ。まあ、作ってくれるだけありがたいと思おう。
「鬼頭さんって、器用なんだね。一人でこんなすごいものを作れるなんて」
「恵ちゃん、コッ!」
諏訪さんが僕に答えるように何かを言おうとすると、鬼頭がものすごい速さで彼女の口を押さえた。事態を飲み込めなかった諏訪さんは大きく目を開ける。
「今のは聞かなかったことにして。いいわね?」
「……はい」
鬼のような形相を浮かべた鬼頭に、僕は肯定するしかなかった。彼女の醸し出す空気は有無を言わせない。実際、「恵ちゃん」くらいまでしか聞こえなかったので、何を言おうとしていたかは分からなかった。
押さえた手を離すと諏訪さんは咳き込みつつ、大きく呼吸をした。
「恵ちゃん、いきなり口を押さえるのは勘弁してよ!」
「あんたが勝手に人のプライベートを暴露しそうになったからでしょ。んっ!」
楽しいやり取りをしていると、鬼頭は何かに気づいた表情を見せる。ポケットに手を入れ、スマホを取り出すと、怪訝な表情を浮かべた。
「彩芽からの電話だ。また加藤のことで相談かな。あいつの話長いのよね。ごめんだけど、席はずわ。あとで私の愚痴に付き合ってね」
そう言って、僕の方に歩いてくると、僕を抜かして部屋から出ていった。扉越しに気だるそうな声と階段を下る音が聞こえてきた。邪魔にならないようにリビングで会話に応じるみたいだ。
「俺たちは引き続き、装飾でも作るとするか。見た感じ、まだまだ作らなきゃいけなさそうだしな。残り一週間、頑張ろう」
庄司は僕の持ってきたビニール袋の中を確認しながら言う。中には、追加の折り紙やゲームで使う道具が入っている。
「そういえば、諏訪さん」
僕は部屋に入った時から気になっていたことに関して、彼女へと問いかけることにした。
「どうしたの?」
「その……手は大丈夫?」
諏訪さんは手に包帯を巻いていたのだ。手首の関節を痛めたような巻き方だったため、何があったのか心配だった。
「ああ、これ。ちょっと転んだ際に、受け身を取るのに失敗して、手首を痛めちゃったんだ。イベントまでには完治すると思うから」
「そうだったんだ。何かできることがあれば言ってね」
「うん。心配してくれて、ありがとう」
「そう言うわけで、俺たちは折り紙を折るのに専念。片手は使える燈に関しては、ペンでおった折り紙に装飾って感じで」
「了解」
全員の担当が決まったところで、僕たちは衣装・装飾作り・イベントの流れについての打ち合わせとイベントに向けて多くのことに専念することになった。
買い物を終え、鬼頭の家へとやってきた。一軒家の二階建ての住まい。外見は僕の住むいえとあまり変わりないが、庭に咲くコスモスやナデシコなど秋の花が華々しく咲いていた。『庭の手入れ』や『仮装衣装を手作り』するところから鬼頭家は凝り性が多いのだと思わされる。
「お邪魔します」
鬼頭に続くように玄関に入り、靴を脱ぐ。置かれた靴の中には、諏訪さんのや庄司の靴が見られた。最近はよく行動する仲であり、見慣れた靴だったためすぐに分かった。
「おかえりなさい。あら、新しい友達?」
邪魔にならないように靴の配置を整えていると奥の方から女性の声が聞こえた。見ると、若い女性の姿があった。薄茶色のポニーテールにパーカーに長ズボンとラフな格好をしている。鬼頭の母親かと思われるが、高校生を持つ母親にしては、若く見える。年相応に見えない美人母親といったところか。
「まあ、そんなところ。ハロウィンパーティに参加してくれることになった新田くん。今日から一週間お手伝いしてくれるらしい」
鬼頭が僕へと手を向けて言う。予定がないって行っただけで、一週間お手伝いするとまでは言っていなかったのだが、これからお世話になる人の母親に伝わってしまっては弁解のしようもない。
「いらっしゃい、新田くん。ごめんなさいね、色々とご迷惑をおかけして」
鬼頭の母は僕の持っているビニール袋に目線を向けながら申し訳なさそうに言った。先ほどデパートで購入した商品は全て僕が持っていた。社会クラス6の特権で浮いた金額も全て装飾の購入に使ったため、多くの品物を持たされる結果となった。
「これ、予算内で購入できたの。予算外のお金は恵の貯金から出るのは忘れていないわよね?」
「大丈夫、大丈夫。新田、私の部屋に行くわよ」
そう言って、鬼頭は近くにあった階段へと登っていく。僕は玄関に上がると母親に一礼をして同じように階段へと上がった。彼女はにこやかな表情を僕に向ける。
階段を上がり終えると、四つの扉が見えた。その中の一つの扉を鬼頭は開ける。扉には親切に『恵』と書かれた看板が吊るされている。
「新田くん、ヤッホー」
「よく来てくれたな」
部屋に入ると、諏訪さんと庄司が僕に向かって明るく挨拶してくれた。諏訪さんの笑顔はいつ見ても惚れるほど太陽のように眩しかった。
二人は部屋の真ん中に置かれたテーブルに向かい合うように座っていた。テーブルの上には折り紙やハサミ、ペンなどが置かれている。また、折り紙で作られたパンプキンなどのハロウィンを代表するキャラクターが並べられている。二人は折り紙を使って、これを作っていたようだ。
テーブルからさらに奥には、鬼頭の勉強机があった。そこにはミシンが置かれている。おそらく鬼頭はあそこに座って、衣装作りに励んでいるようだ。
「ちょっといない間にたくさん作ってくれたね」
「ようやくコツを掴んできたからな。今置かれているやつを作るならお手の門だよ」
「頼もしいね。よっしゃ! 私もまた本腰を入れるとするかな。じゃあ、新田。荷物置いたら、肇にメジャーで身体測定してもらって」
「うん、了解」
僕はテーブルの横に買った荷物を置いた。その間に庄司が鬼頭からメジャーを受け取り僕の元へとやってくる。
「残念だったな。俺が測る役で」
「別に誰でも構わないよ」
「強がるなって。滝森とかがいてくれたら良かったな」
庄司の言葉に僕は口籠る。それは、庄司か滝森さんのどちらに図ってもらいたいかと聞かれれば、即答で滝森さんと答えるだろう。
庄司はメジャーを引っ張ると僕の胸部、腹部、上半身から下半身にかけての長さを図っていった。
僕は背筋を伸ばしつつ、邪魔にならないようにぼーっと目の前を見ていた。
ベランダに伝わる窓は網状のカーテンで薄く遮られている。カーテンをつける部分にハンガーが吊るされており、ハンガーには仮装と思しき衣装がかけられていた。
右から順にキョンシー、ドラキュラ、ポリス、そして魔女といった感じだ。
「これ、気になる? ちなみに静のはどれだと思う?」
衣装を見ていた僕に対して、鬼頭が不敵な笑みを浮かべて僕へと問いかける。
「魔女かな」
「おおー、正解」
鬼頭のテーブルから一番近くにあったので言ってみたのだが、正解してしまったみたいだ。滝森さんの衣装に関して、手抜きはなく作成したと言っていたが、僕からすれば全てが同じくらい高いクオリティで作られていた。
「見た目はどう? 男のあんたなら惚れそう?」
「それは、まあ……」
滝森さんが着るなら、言うまでもなく惚れるだろう。それにしても、ソシャゲのしすぎか魔女にしては露出が少ないと思ってしまった。長袖の上部に、ミニスカートではあるもののソックスが長いため、腿が少し露出する程度だろう。
「本当はもう少し、肩の部分の布部を切って、マントつけるみたいな感じにしたかったんだけど、子供向けのハロウィンだし、最近肌寒くなってきたからお預けにしたの。まあ、終わってから、その辺は試そうと思うわ。新田には絶対に見せないけどね」
鬼頭は衣装のプレゼンを僕にしながら、人知れず妄想を膨らませていた。
「ほい、測定完了。もう楽にしていいぞ」
二人で話している間に身体測定は無事終了した。
「それにしても、これ全部、鬼頭さんが作ったの?」
「まあね」
鬼頭は僕の身体情報が記入されたメモ帳を庄司から受け取りつつ、応答する。
「去年も開催してたから、その際にキョンシーとポリスを。今年はドラキュラと魔女を作ったのさ。あとは、あんたの着る『死神』だけ」
「僕は死神なんだ」
「残り一週間だからね。一番手軽そうなものを選ばせていただきました。いいでしょ、どうせ新田が着るんだし」
僕は鬼頭の中では、かなり雑な扱いを受けているようだ。まあ、作ってくれるだけありがたいと思おう。
「鬼頭さんって、器用なんだね。一人でこんなすごいものを作れるなんて」
「恵ちゃん、コッ!」
諏訪さんが僕に答えるように何かを言おうとすると、鬼頭がものすごい速さで彼女の口を押さえた。事態を飲み込めなかった諏訪さんは大きく目を開ける。
「今のは聞かなかったことにして。いいわね?」
「……はい」
鬼のような形相を浮かべた鬼頭に、僕は肯定するしかなかった。彼女の醸し出す空気は有無を言わせない。実際、「恵ちゃん」くらいまでしか聞こえなかったので、何を言おうとしていたかは分からなかった。
押さえた手を離すと諏訪さんは咳き込みつつ、大きく呼吸をした。
「恵ちゃん、いきなり口を押さえるのは勘弁してよ!」
「あんたが勝手に人のプライベートを暴露しそうになったからでしょ。んっ!」
楽しいやり取りをしていると、鬼頭は何かに気づいた表情を見せる。ポケットに手を入れ、スマホを取り出すと、怪訝な表情を浮かべた。
「彩芽からの電話だ。また加藤のことで相談かな。あいつの話長いのよね。ごめんだけど、席はずわ。あとで私の愚痴に付き合ってね」
そう言って、僕の方に歩いてくると、僕を抜かして部屋から出ていった。扉越しに気だるそうな声と階段を下る音が聞こえてきた。邪魔にならないようにリビングで会話に応じるみたいだ。
「俺たちは引き続き、装飾でも作るとするか。見た感じ、まだまだ作らなきゃいけなさそうだしな。残り一週間、頑張ろう」
庄司は僕の持ってきたビニール袋の中を確認しながら言う。中には、追加の折り紙やゲームで使う道具が入っている。
「そういえば、諏訪さん」
僕は部屋に入った時から気になっていたことに関して、彼女へと問いかけることにした。
「どうしたの?」
「その……手は大丈夫?」
諏訪さんは手に包帯を巻いていたのだ。手首の関節を痛めたような巻き方だったため、何があったのか心配だった。
「ああ、これ。ちょっと転んだ際に、受け身を取るのに失敗して、手首を痛めちゃったんだ。イベントまでには完治すると思うから」
「そうだったんだ。何かできることがあれば言ってね」
「うん。心配してくれて、ありがとう」
「そう言うわけで、俺たちは折り紙を折るのに専念。片手は使える燈に関しては、ペンでおった折り紙に装飾って感じで」
「了解」
全員の担当が決まったところで、僕たちは衣装・装飾作り・イベントの流れについての打ち合わせとイベントに向けて多くのことに専念することになった。



