【試用】信用スコア政策

 時刻は深夜1時。自室のベッドの上で『カルぺ・ディエム』の超高難易度クエストの周回に耽っていた。今日の昼間できなかった分を睡眠時間を削って周ることで帳消しにしようとしていた。『カルぺ・ディエム』のプレイ時間を削られたのは惜しいところだが、滝森さんと休日に一緒にいられたことと比較すれば塵のようなものだ。

 それに、今日は何より滝森さんから大事な話を聞けたのだ。僕と彼女だけの秘密が増えていく度に僕の気分は最高潮へと達する。秘密が増えると言うことは彼女の僕に対しての信用度が上がっている証拠なのだ。社会からの信用度が上がるよりも、彼女からの信用度が上がる方が僕としては嬉しい。

 ソシャゲに熱中していると、一件の通知が入る。送信元は『鬼頭』からだった。

『遅い時間にごめん。静から聞いたよ。ハロウィンイベントに参加してくれるんだって。サンキュー。早速で悪いんだけど、明日というか今日、うちに来れたりする? 〇〇駅の一番出口付近で待ってくれたら、私が迎えに行く。時間はいつでも大丈夫!』

 深夜遅くに送るメッセージではないと不満を漏らしたくなる内容だが、これに関しては僕に原因があるため怒りを湧かせるのはお門違いだ。

 滝森さんへの協力をするにあたって、彼女から来週の日曜日に鬼頭家で開かれる『ハロウィンパーティ』に参加することにした。鬼頭家の母親が英語教室をやっているらしく、年に一度、英語教室の生徒たちでハロウィンイベントを開催しているようだ。

 僕の知人の参加者は、鬼頭、庄司、諏訪さん、滝森さんの四人とのことだった。磯貝や菊池と言った彼女の秘密を打ち明ける際の部外者となりそうな存在がいないため、ハロウィンイベントは話す際の絶好の機会になっていた。

 滝森さんから鬼頭に僕も参加していいか聞いてもらって、無事承諾を得ることができた。だが、参加が決まった時期が遅すぎたのだろう。滝森さん曰く、ハロウィンで使う衣装は鬼頭のお手製らしい。そのため、僕の衣装をすぐに仕上げるために僕にメッセージを送ってくれたのだと思う。

『こちらこそ、いきなり参加希望してごめん。明日は一日中暇だから大丈夫。お昼くらいに集合でもいいかな?』

 深夜1時なのだ。下手に朝に待ち合わせして遅刻してしまうよりは、確実にいけるであろう昼頃を選択しておいた方がいい。

『深夜なのに返信はやっ! 了解。朝って言われると寝坊しそうだから助かるわ。じゃあ、昼の12時30分に集合でよろしく。アンタも寝坊しないように早めに寝なさいよ』

 どの口が言っているんだと思いながら、SUNSUNのキャラクターに『了解ッ!』と書かれたスタンプを押しておいた。

『因みに、明日は燈と肇も一緒だからよろしく。静がいなくて、残念だったわねっ!』

 スタンプで終わると思われたやりとりだが、追記で鬼頭からメッセージが送られてくる。そんな情報は必要ないと思いつつも、滝森さんの仮装姿が見れないのは本当に残念だ。まあ、ハロウィンイベント当日には見れるのだから問題ない。

『滝森さんは明日何かあるの?』

 ひとまず、滝森さんの明日の用事を聞いてみる。しょんぼりしたスタンプを送るのもありだが、二連続スタンプで会話するのは拒まれる。

『教えません! プライベート情報だから! 私はもちろん静が何しているか知っているけどね! 新田と違って』

 最後の一言は余計だと思いつつ、SUNSUNキャラクターが冷たい視線を送っている姿に『……。』の文字が入ったスタンプを送りつける。

 こっちだって、鬼頭が知らない彼女の秘密を持っている。二人の間だけの大切な秘密を。

 鬼頭からの返事はなかったため、チャットアプリを閉じ、再び『カルペ・ディエム』を開いた。

 すると、今度はRIGからメッセージが飛んできた。彼も今の時間まで『カルぺ・ディエム』に耽っていたようだ。

『超高難易度クエスト初クリアしましたっ!』

 メッセージの内容とともにいつものごとく『クエスト クリア』のエフェクトの入った画像が送られてきた。パーティの内容を見ると僕と同じようなパーティが作られている。事前に僕がどうやってクリアしたかの動画を送っていたので参考にしたのだろう。どんな手段を使ったとはいえ、クリアしたのはめでたいことだ。

『おめでとう! これを周回すれば、かなりレアなアイテムが手に入るよ!』

 いつものごとく周回を促すと『これの周回は難しいですよ!』と嘆きの返信が飛んできた。実際、画像を見るとギリギリのところで勝てたみたいだ。今の時間までやっていたことから推察するとかなり苦労していたのだろう。

 それでも、まだ始めて半年ほどのプレイヤーが今回のクエストをクリアするなんて。最盛期の僕よりもやり込んでいるのではないだろうか。

 もしかすると、いつか抜かれるかもしれないな。RIGの成長速度に負けないように、僕はもう少しだけ超高難易度クエストを周回することにした。

 やっている途中、滝森さんと一緒に『カルぺ・ディエム』をプレイできたらなと言う願望を抱きつつ、一緒にプレイしているシチュエーションを妄想した。