「だよな、亮太」
学校の帰り道。四人で仲良く話していると僕の隣にいた男が僕の肩に腕を回した。
加藤 宏大。四人の中でリーダー格となる存在だ。ストレートの金髪に柔道を習っているため肉質のいい体をしている。彼は僕に笑みを浮かべているが、その笑みは何だかイヤらしいものだった。
「そ、そうだね」
僕は彼の言葉に対して、間髪を入れずに肯定する。彼らと一緒にいる時は、僕の中の選択肢に否定なんてものは入っていない。
「さすが亮太、分かってるね!」
すると僕の足の前に不意に彼の足が入ってきた。同時に肩に回った彼の腕が強く僕を押し出す。片足を嵌められバランスを崩し、コンクリートで固められた地面に倒れ込んだ。カバンを握っていた方の腕を前にして転けたためカバンと自分の体重が片腕に乗り、痛みが僕を襲った。
「亮太、大丈夫か?」
加藤は、いきなり転んだ僕を見て、微笑みながらも心配するように声を掛ける。
「宏大、何やってるんだ」
そんな加藤の頭を彼の後ろにいた男がチョップをかます。
「痛って! 何するんだよ、和馬!」
鈴木 和馬。天然パーマに大らかに見える表情が特徴的な男だ。細身で四人の中では一番身長が高い。
「大丈夫か、亮太?」
和馬は倒れていた僕に手を差し出す。側から見れば優しい行動。だが、僕にとっては彼の行動は地獄に感じていた。
「あ、ありがとう」
だからと言って、僕に拒否権はない。素直に彼の手を取った。すると、彼は勢いよく僕の手を強く握る。細身だが、彼の握力はクラスでも上位を争うほどだ。強く握られた手に痛みを感じながらも僕は為されるがまま彼が引っ張ってくれるのに任せた。
鈴木の協力のもと立ち上がると、僕たちは再び歩き始めた。
肩と手に走る痛み。最悪ではあるが、その痛みによって、胸板や腹筋、脹脛やつま先の痛みは相対的に和らいでいた。これらは今この場所に来るまでに彼らに浴びせられた暴力による痛みだ。
歩いていると、十字型の道路に面する。僕はそれを見るとようやくホッとした気持ちになった。この十字路で僕と彼らは別れることになる。
「じゃあ、亮太。今日はこれで、じゃあな」
十字路に来ると加藤はそう言って、僕を僕自身の帰路へと押し出した。危うく、また倒れるところだったが、足を踏ん張らせ何とか持ち堪えることができた。
「それと、ほらよ。お前のスマホ」
僕が振り返ると彼はポケットにしまっていた僕のスマホを取り出して、こちらに向けて放り投げた。僕は落とさないように慌てて手を前に出す。何とかスマホを落とすことなくキャッチすることができた。
安堵する僕をよそに、目の前にいる彼ら仲良し四人組は自分たちの帰路に体を向けて楽しく話し始めながら歩いていった。最初から僕なんかいなかったかのように一切振り向きもせず、帰っていく。
僕は彼らを睨みつつも転んだり、蹴られたことで制服に付いてしまった砂を払った。払う際に少しだけ痛みを伴った。
学校の帰り道、僕は彼らに毎回このような仕打ちを受けている。彼らの行動はとても悪質だ。僕は彼らと昼食、帰路を共にする。彼らは昼食の際には一切僕に手を出さない。むしろ仲良さげに話しかけてくる。だが、帰路で生徒が誰もいなくなったところで僕へのいじめが始まる。それも先ほど鈴木がやったように彼ら自身でも戯れ合うことによって、僕にだけ暴力を奮っているようには見えない感じにしている。僕らの行動を毎日見ているなら、僕にだけ当たりが特別であることが分かるだろう。でも、そんな人間は一人もいない。みんなチラ見程度に僕たちを見るだけだ。だから気づくことはできない。
さらに悪質なところは下校最初の段階で僕からスマホを取っておくところだ。会話だけなら大丈夫だが、動画などを撮られていたら自分たちがいじめていることがバレてしまうのを考慮に入れているのだろう。
僕の通っている高校の偏差値が高いだけあって、彼らのいじめ方は利口だった。最初のうちは対抗しようと動画撮影機を忍ばせようと考えたが、値段の高さ故に購入することができなかった。それに、もし彼らに見つかった場合に暴力行為が激しくなる可能性を考えると恐怖で実行にはうつれないだろうと思った。
今は我慢に我慢を重ねている。高校二年の二学期であるため、半年間の我慢で終わると思えば楽なものだ。最悪の場合、三年になっても同じクラスということはありうるが、それでも一年半。我慢できない範囲ではない。数ヶ月この仕打ちを受けてきて、体は慣れ始めてしまっている。これが良いことなのか寂しいことなのかは正直何ともいえない。
砂を綺麗に払ったところで僕は後ろを振り向くと、自分の帰路に向かって歩き始めた。そういえば、一学期に鳴り響いていた工事の音が今日はひとつも聞こえなかった。鬱陶しい音だったが、いざ無くなると悲しいものだ。
学校の帰り道。四人で仲良く話していると僕の隣にいた男が僕の肩に腕を回した。
加藤 宏大。四人の中でリーダー格となる存在だ。ストレートの金髪に柔道を習っているため肉質のいい体をしている。彼は僕に笑みを浮かべているが、その笑みは何だかイヤらしいものだった。
「そ、そうだね」
僕は彼の言葉に対して、間髪を入れずに肯定する。彼らと一緒にいる時は、僕の中の選択肢に否定なんてものは入っていない。
「さすが亮太、分かってるね!」
すると僕の足の前に不意に彼の足が入ってきた。同時に肩に回った彼の腕が強く僕を押し出す。片足を嵌められバランスを崩し、コンクリートで固められた地面に倒れ込んだ。カバンを握っていた方の腕を前にして転けたためカバンと自分の体重が片腕に乗り、痛みが僕を襲った。
「亮太、大丈夫か?」
加藤は、いきなり転んだ僕を見て、微笑みながらも心配するように声を掛ける。
「宏大、何やってるんだ」
そんな加藤の頭を彼の後ろにいた男がチョップをかます。
「痛って! 何するんだよ、和馬!」
鈴木 和馬。天然パーマに大らかに見える表情が特徴的な男だ。細身で四人の中では一番身長が高い。
「大丈夫か、亮太?」
和馬は倒れていた僕に手を差し出す。側から見れば優しい行動。だが、僕にとっては彼の行動は地獄に感じていた。
「あ、ありがとう」
だからと言って、僕に拒否権はない。素直に彼の手を取った。すると、彼は勢いよく僕の手を強く握る。細身だが、彼の握力はクラスでも上位を争うほどだ。強く握られた手に痛みを感じながらも僕は為されるがまま彼が引っ張ってくれるのに任せた。
鈴木の協力のもと立ち上がると、僕たちは再び歩き始めた。
肩と手に走る痛み。最悪ではあるが、その痛みによって、胸板や腹筋、脹脛やつま先の痛みは相対的に和らいでいた。これらは今この場所に来るまでに彼らに浴びせられた暴力による痛みだ。
歩いていると、十字型の道路に面する。僕はそれを見るとようやくホッとした気持ちになった。この十字路で僕と彼らは別れることになる。
「じゃあ、亮太。今日はこれで、じゃあな」
十字路に来ると加藤はそう言って、僕を僕自身の帰路へと押し出した。危うく、また倒れるところだったが、足を踏ん張らせ何とか持ち堪えることができた。
「それと、ほらよ。お前のスマホ」
僕が振り返ると彼はポケットにしまっていた僕のスマホを取り出して、こちらに向けて放り投げた。僕は落とさないように慌てて手を前に出す。何とかスマホを落とすことなくキャッチすることができた。
安堵する僕をよそに、目の前にいる彼ら仲良し四人組は自分たちの帰路に体を向けて楽しく話し始めながら歩いていった。最初から僕なんかいなかったかのように一切振り向きもせず、帰っていく。
僕は彼らを睨みつつも転んだり、蹴られたことで制服に付いてしまった砂を払った。払う際に少しだけ痛みを伴った。
学校の帰り道、僕は彼らに毎回このような仕打ちを受けている。彼らの行動はとても悪質だ。僕は彼らと昼食、帰路を共にする。彼らは昼食の際には一切僕に手を出さない。むしろ仲良さげに話しかけてくる。だが、帰路で生徒が誰もいなくなったところで僕へのいじめが始まる。それも先ほど鈴木がやったように彼ら自身でも戯れ合うことによって、僕にだけ暴力を奮っているようには見えない感じにしている。僕らの行動を毎日見ているなら、僕にだけ当たりが特別であることが分かるだろう。でも、そんな人間は一人もいない。みんなチラ見程度に僕たちを見るだけだ。だから気づくことはできない。
さらに悪質なところは下校最初の段階で僕からスマホを取っておくところだ。会話だけなら大丈夫だが、動画などを撮られていたら自分たちがいじめていることがバレてしまうのを考慮に入れているのだろう。
僕の通っている高校の偏差値が高いだけあって、彼らのいじめ方は利口だった。最初のうちは対抗しようと動画撮影機を忍ばせようと考えたが、値段の高さ故に購入することができなかった。それに、もし彼らに見つかった場合に暴力行為が激しくなる可能性を考えると恐怖で実行にはうつれないだろうと思った。
今は我慢に我慢を重ねている。高校二年の二学期であるため、半年間の我慢で終わると思えば楽なものだ。最悪の場合、三年になっても同じクラスということはありうるが、それでも一年半。我慢できない範囲ではない。数ヶ月この仕打ちを受けてきて、体は慣れ始めてしまっている。これが良いことなのか寂しいことなのかは正直何ともいえない。
砂を綺麗に払ったところで僕は後ろを振り向くと、自分の帰路に向かって歩き始めた。そういえば、一学期に鳴り響いていた工事の音が今日はひとつも聞こえなかった。鬱陶しい音だったが、いざ無くなると悲しいものだ。



