「浩二。私は件の死神だ。本来死ぬ予定のある人以外に姿を見せることはない。だが、今回私はその掟を破ってここに来た。
鈴奈は、彼女は遺書を書いている。聞いているだろうが、それは彼女のカバンの中の奥底に入っている。ぜひ読んでほしい。
そして、鈴奈はお前に感謝している。何回も彼女からお前の話を聞いた。楽しそうにお前のことを話すのを聞いて、少し私も嫉妬した。
だが、感謝しているのは私も同様にだ。
鈴奈の最後の四ヶ月を有意義なものにしてくれてありがとう。私からも感謝する。彼女の笑顔、それは素晴らしいものだったし、楽しそうなものだった。本当にありがとう」
そう死神に言われた。死神も殺したくて殺したわけではないんだな。
ただ、そうだとしても、俺には言いたいことがある、
「なら、なぜ鈴奈の命を奪ったんだ? たとえそれが任務だとしても、俺には認めることなんてできない。鈴奈を生き返らせてくれ。鈴奈の死をなかったことにしてくれ」
「それはできない、できないんだ。私には何もできない。もし、私が死の運命を捻じ曲げたところで、私よりも高位の死神が命を奪っていくだけなんだ。私が無力で本当に済まない」
「ちくしょう。だったらこの怒りをどこにぶつけたらいいんだよ」
この人以外に当たれる人なんていない。神も閻魔大王も、高位の死神も、俺には会う事すらかなわない。
そもそも高位の死神以外は存在するのかも怪しい。
「ああ、ちくしょう。なんで鈴奈が死ななきゃならなかったんだ」
そして俺の目の前の景色は現実に戻った。
目の前には相変わらず鈴奈の死体が転がっている。
やはり触ってみたけれど、冷たく、体温が失われている。
ああ、死んでるんだなと思い、再び暗い気持ちになった。
そして俺は、鈴奈の遺書を手に取る。
『あなたがこれを読むころには私は生きていないでしょう。
なんちゃって!! 私これ一度書いてみたかったんだ。夢がかなってよかったよー。これめっちゃ遺書っぽいでしょ? あ、それかなんか暗殺されそうになっている人のメッセージとか? まあ、この手紙も言ったら遺書だよね。
……そんな冗談は置いといて、私は浩二君に本当に感謝しています。まずそれを伝えたいです。たぶん私は浩二君がいなければ恐怖でベッドにもぐりながら生活する日々を送っていたでしょう。
そんな日々、想像するだけで怖いです。でも、浩二君がいたから、私は全てが楽しかった。水族館に行った時も、遊園地に行った時も、海に行った時も、イギリスに行った時も、ずっと楽しかった。もう私にはあの日々が経ったの四ヶ月の間に起きたこととは思えないくらい!! そして、夏祭り、恵美ちゃんに色々と勘繰られて本当にビビったし、そのあとのメイド服も、本当に楽しかった。あ、遺品として残しておくからね。それと、ここにサービスショット挟んでおいたから。谷間見えてるやつね。他の人には見せたらだめだよ。でね、最後本当に遊星君と一緒に過ごせて本当に良かった。
それにしても浩二君って本当馬鹿だよね、絶対に四ヶ月以内に死ぬ人を愛するなんて。本当、浩二君ってそう言うところあるんだから。まあ、私もそんな状況下で浩二君を愛しちゃったんだけどね。
そしてここから遺書らしく私の遺志を伝えたいと思います。まず最初に私をあなたの彼女と言ってください。私たちそう言う関係とは言ってなかったけどさ、ほとんどみたいなものだったじゃん。
もし私の勘違いだったら恥ずかしすぎて死にたくなるけど。
でもやっぱり浩二君の彼女になりたかったよ。だからさ、彼女って言ってよ。私は浩二君のことが好きで、浩二君も私のことが好きなんだからさ。
私の葬式の時は絶対に皆に言ってね、恵美ちゃんとかに。その時は照れ隠しでただのクラスメイトとか言わないでよ? あの、『君の遺影を取りたい』の主人公みたいにさ。頼むよ!
二つ目に、私の遺品として水族館で勝ったお人形たちを受け取ってほしいの。元からそのために買ったやつだし。
それだけじゃないんだよね。
ちゃんと私の浩二君由来の物はちゃんと入れてるから。
他にもメイド服も入れといたし、イギリスのお土産も入れたし、あと何入れたかなー、あ、サッカーグッズを入れといたよ。とにかく色々入れたから、絶対にもらってね。
三つ目。私がいなくなっても、恵美との関係は続けておいてね。もし私のせいで二人が疎遠になったら嫌だから。
四つ目。お母さん、恵美ちゃんあたりへの遺言を書いた手紙入れてるからよろしくね、
そして四つ目、私のことは絶対忘れないでね。こんなことを言ったら重い女だと思われちゃうかもしれないけど、そのことを踏まえて、私の写真見て私の顔を定期的に思い出してほしいし、私の声も時々でいいから思い出してほしい。一緒に撮った動画に入っている私の声を聴いてさ。死ぬまで覚えておいてください。 最後に、長生きしてください。私はいつまでも浩二君のことを待っているからさ、絶対悲しくなって自殺したりとかしないでね。
あ、でも私以外の女と結婚とかはしていいからね。流石にそれを止める権利は私にはないと思うし。
じゃあバイバイ、絶対幸せになってね。鈴奈より』
その手紙を読んでいる時に鈴奈の声が実際に聞こえた気がした。たぶんそれは幻聴なんかじゃないんだと思う。鈴奈が実際に俺に語り掛けている。そんな気がした。
そもそも死神なんているんだ、今の俺にはどんな非科学的な事象も信用できる。
はあ、鈴奈は本当に死んじゃったんだなと、今この手紙を読んで実感した。まだ今も近くにいて笑いかけているみたいだ。
ああ、鈴奈鈴奈鈴奈鈴奈鈴奈鈴奈。大好きだ。お前が言ったことは全て守る。お前のことも一生忘れないよ。
ああ、涙が止まらないな。



