そして三日後、相原さんと、俺と鈴奈で夏休みに来た。
花火が上がるのが八時からだから、それまで夏祭りを遊びつくそうという事だ。
「しかし、今日も浩二君と一緒に遊べて私嬉しいよ」
「こら、私もいるんだけど」
「あ、それはごめんね」
そう言って相原さんに謝る鈴奈。
「しかし、あなたたちどこに行ってたのよ」
それに対する返答は難しい。正直に答えたらスケールがでかすぎる。
さて、どう言い訳――
「イギリス」
おい、鈴奈。
「え!? イギリス。いったいどうして?」
「行きたかったから。それに私お小遣いいっぱい持ってるし」
「受験生なのに、大胆なことをするね」
「ふふふ、まあ、勉強なんてやればちょちょいのちょいだし」
まあ、鈴奈の場合、大学進学の道がないからが正解だがな。
「それにね、浩二君との旅行楽しかったから!!」
ん? さらなる問題発言をした気が……。
「え、私じゃなくて、町田君を取るの?」
「うん。だって、浩二君と一緒に行くの楽しいから」
「……そ、」
相原さんはその言葉を聞いて顔をプイっとそっぽを向いた。
そんな彼女を無視して、鈴奈は俺に話しかける。
「ねね、人生最後の夏休み。楽しいものにしてよ?」
「責任重大だね」
「いいじゃん。それくらい責任があるんだよ」
そんなこと言われてもな。
俺にできることなんて、たかが知れているだろう。
俺にはあと何ができるのだろうか。
「ねえ、私の鈴奈を取らないでよ」
「おい、何をするんだよ」
そう、相原さんが、俺を軽く突き飛ばす。落ち込んでたんじゃないのかよ。
「海外旅行で一緒だったんだからいいでしょ」
そして、二人は歩いて行った。
ちくしょう、俺を置いていくなよ。
落ち込んでいる暇があれば鈴奈を取り返した方が早いという考えなのだろうか。
★★★★★
「ほーら、あげる!!」
鈴奈は俺に屋台で勝ったソーセージを差し出す。
「一口どうぞ」
その鈴あの顔は明らかにおちょくっている感じだ。
俺に、一口食べさせたいのか。
「鈴奈、恥ずかしいならいいぞ」
「え?」
「え?」
それを聞くと、恥ずかしい顔をしている。
「まさか、おちょくっときながら、恥ずかしがっているのか?」
「恥ずかしいに決まってるじゃん。一応私と浩二君は異性なんだし」
「まあ、そうだけどよ」
鈴奈に恥ずかしいという感情があるなんて知らなかったな。
病気の時とか暴走していたし。
「お二人さん、イチャイチャしないの」
「イチャイチャしてないわよ」
「もしかして付き合い――?」
「始めてないよ」
「始めてないわ」
二人でツッコミを入れる。
ただ、あの飛行機の事を踏まえたら距離感は恋人のそれに近いものになっているんだろうけど。
今の俺たちは鈴奈が死ぬ一か月間全力で楽しもうと決めただけだ。
恋人とは意味合いが違う。
そしてそのあとは射的、金魚すくいなどなどの夏祭りを楽しみつくす。
綿菓子が特に美味しかった。
そして、綿菓子を食べ終わったタイミングで、
「ちょっとお花詰んでくる」
と言って鈴奈がトイレに行ってしまった。
思えば鈴奈はこの中で一番食べていた。
そりゃ、トイレにも行きたくなる。
……この中でトイレ空いているのか、そこが気になるところだけど。
何しろ、女子トイレは基本男子よりも並ぶしな。
「相原さん」
鈴奈がトイレに言ったタイミングで言う。
「俺たちは付き合ってないけど、それに近い状況とだけは言いたい。付き合うというワードでは言い表せない事だが」
相原さんに本当のことは言えない。ただ、それだけは言える。
「それはどういう言葉で言えるの?」
「言葉では言い表せない。親友とも違うし、カップルとも違う。ただ、俺たちはこの関係に名前は付けられないんだ」
「そう……」
不服そうな顔だ。
確かにこれは真実ではない。
言うなれば死ぬまでを楽しむ同盟的な物だからな。
だが、今はこれしか言えない。
「あー! 二人で何話してるの? もしかして私を捨てて恵美に乗り換えようとしてるの?」
「何を言ってるんだよ。この馬鹿」
まさか堂々とそんなことをする訳がないだろ。
「それよりも鈴奈、そろそろ花火が上がるぞ」
「え、本当? じゃ、行こ行こ」
「そうも簡単にはいかないんだ。それにもっといい場所がある」
「そう、町田君が調べてくれたみたいなの」
「これも鈴奈のためだからな」
俺は腰を上げ、そのまま二人を連れて丘の上に向かう。
「ネットで調べたらここが穴場って出てたんだ。そのブログはあまり閲覧人数が多くなかったから大丈夫だと思う」
「いい所見つけたね」
「やるじゃん」
二人から褒められて少し嬉しい。
「あとはちゃんと見れるかだけどねー」
「見れるに決まってんだろ。ブログに書いてあったんだから」
「ブログに頼りすぎじゃない?」
「うるせえ」
そして、その一〇秒後、花火がボツボツと空に浮かんでは消えていく。
とりあえずいい感じで花火が見れて一安心だ。
「安心した?」
鈴奈がにやにやとした様子で言った。
「るせえ」
俺はその鈴奈の言葉に対してそっと顔をそむけた。
その後も花火は続いていく。
迫力満点で俺たちは花火をしっかりと目に入れていく。
これが鈴奈とみる最後の花火なのだから。
気づけば俺の腕は鈴奈の方に向かって行く。
鈴奈の腕をつかみたいという欲求だ。
手をつなぐという事は鈴奈と俺の間では普通の事だ。
だが、俺が今からしようとしていることは、そう、恋人のようなつなぎ方だ。
鈴奈も俺の方を見た。そしてニヤリとしながら俺の手を取った。
その鈴奈の手は暖かい。そして鈴奈の顔を見たら少しだけ赤くなっていた。
それは俺の理想が生み出した幻想なのだろうか。
それとも今のこの姿を相原さんに見られているからなのだろうか。
だが、どちらでもいい。
少なくとも俺は今人生で一番きれいな花火を見ているのだから。
そして、最後の花火ラッシュが始まった。
花火で空が様々な色で埋め尽くされていく。
すごいなと思った。
そうして、花火が終わった。終わってしまった、
その瞬間寂しくなる。
もう、鈴奈とは花火が見れないんだなと思って。
歩と鈴奈の顔を見る。すると彼女の目から一粒の涙が零れ落ちるのが見えた。
鈴奈も俺と同じ気持ちなんだなと思い、少し嬉しくなった。
「終わっちゃったな」
鈴奈に語り掛ける。
「うん、綺麗だったわ」
その鈴奈の言葉にはやはり言葉以上の重みがある。
俺は咄嗟に鈴奈に抱き着いてしまった。
「鈴奈、大丈夫だ。俺がついてる」
「……うん」
鈴奈は泣きながら俺に抱き着いた。
その姿は今にも消えてしまいそうに儚かった。
「ねえ、人前でいちゃつかないで」
丘から降りる最中に相原さんが言った。
確かにあの時の俺たちは、少なくとも俺は相原さんのことをないがしろにしていた。
怒ってもいいと思う。
「いちゃついて悪いの?」
あれ、鈴奈?
「やっぱり付き合ってないの?」
「付き合ってないよ。私たちは同盟だよ」
「やっぱり同じことを言うんだね……。私も仲間に入れてよ」
「だめーーーーーーーー」
舌を出して言う鈴奈。
「言ってやってもいいんじゃないか?」
「いや、絶対に知られたくないの!!」
バッテンマークを作る鈴奈。
どれだけばれたくないんだよ。
それをうけて相原さんは不満そうな顔をしている。
「でも、時が来たら教えてあげるから」
「本当? それっていつよ」
「私の誕生日くらいかなあ」
鈴奈はそう言っているが、教えるときというのは、実際鈴奈が死ぬときだろうか。
そして教えるんじゃなく、自然と知る形になるんだろうな。
そんなことを考えていたらまた鈴奈の死が感じられて嫌だ。
その時まで真実を知れないというのはかわいそうだが、鈴奈が知られたくないと言っている以上、俺から伝えるのもおかしい話だ。
鈴奈が明るいのに、俺が落ち込んでいたらダメだろ。
「なーに暗い顔してるの? 花火見れてよかったじゃん」
あ、鈴奈はやっぱり明るいな。
そんな笑顔を見て俺も落ち込んでられないなと思った。
花火が上がるのが八時からだから、それまで夏祭りを遊びつくそうという事だ。
「しかし、今日も浩二君と一緒に遊べて私嬉しいよ」
「こら、私もいるんだけど」
「あ、それはごめんね」
そう言って相原さんに謝る鈴奈。
「しかし、あなたたちどこに行ってたのよ」
それに対する返答は難しい。正直に答えたらスケールがでかすぎる。
さて、どう言い訳――
「イギリス」
おい、鈴奈。
「え!? イギリス。いったいどうして?」
「行きたかったから。それに私お小遣いいっぱい持ってるし」
「受験生なのに、大胆なことをするね」
「ふふふ、まあ、勉強なんてやればちょちょいのちょいだし」
まあ、鈴奈の場合、大学進学の道がないからが正解だがな。
「それにね、浩二君との旅行楽しかったから!!」
ん? さらなる問題発言をした気が……。
「え、私じゃなくて、町田君を取るの?」
「うん。だって、浩二君と一緒に行くの楽しいから」
「……そ、」
相原さんはその言葉を聞いて顔をプイっとそっぽを向いた。
そんな彼女を無視して、鈴奈は俺に話しかける。
「ねね、人生最後の夏休み。楽しいものにしてよ?」
「責任重大だね」
「いいじゃん。それくらい責任があるんだよ」
そんなこと言われてもな。
俺にできることなんて、たかが知れているだろう。
俺にはあと何ができるのだろうか。
「ねえ、私の鈴奈を取らないでよ」
「おい、何をするんだよ」
そう、相原さんが、俺を軽く突き飛ばす。落ち込んでたんじゃないのかよ。
「海外旅行で一緒だったんだからいいでしょ」
そして、二人は歩いて行った。
ちくしょう、俺を置いていくなよ。
落ち込んでいる暇があれば鈴奈を取り返した方が早いという考えなのだろうか。
★★★★★
「ほーら、あげる!!」
鈴奈は俺に屋台で勝ったソーセージを差し出す。
「一口どうぞ」
その鈴あの顔は明らかにおちょくっている感じだ。
俺に、一口食べさせたいのか。
「鈴奈、恥ずかしいならいいぞ」
「え?」
「え?」
それを聞くと、恥ずかしい顔をしている。
「まさか、おちょくっときながら、恥ずかしがっているのか?」
「恥ずかしいに決まってるじゃん。一応私と浩二君は異性なんだし」
「まあ、そうだけどよ」
鈴奈に恥ずかしいという感情があるなんて知らなかったな。
病気の時とか暴走していたし。
「お二人さん、イチャイチャしないの」
「イチャイチャしてないわよ」
「もしかして付き合い――?」
「始めてないよ」
「始めてないわ」
二人でツッコミを入れる。
ただ、あの飛行機の事を踏まえたら距離感は恋人のそれに近いものになっているんだろうけど。
今の俺たちは鈴奈が死ぬ一か月間全力で楽しもうと決めただけだ。
恋人とは意味合いが違う。
そしてそのあとは射的、金魚すくいなどなどの夏祭りを楽しみつくす。
綿菓子が特に美味しかった。
そして、綿菓子を食べ終わったタイミングで、
「ちょっとお花詰んでくる」
と言って鈴奈がトイレに行ってしまった。
思えば鈴奈はこの中で一番食べていた。
そりゃ、トイレにも行きたくなる。
……この中でトイレ空いているのか、そこが気になるところだけど。
何しろ、女子トイレは基本男子よりも並ぶしな。
「相原さん」
鈴奈がトイレに言ったタイミングで言う。
「俺たちは付き合ってないけど、それに近い状況とだけは言いたい。付き合うというワードでは言い表せない事だが」
相原さんに本当のことは言えない。ただ、それだけは言える。
「それはどういう言葉で言えるの?」
「言葉では言い表せない。親友とも違うし、カップルとも違う。ただ、俺たちはこの関係に名前は付けられないんだ」
「そう……」
不服そうな顔だ。
確かにこれは真実ではない。
言うなれば死ぬまでを楽しむ同盟的な物だからな。
だが、今はこれしか言えない。
「あー! 二人で何話してるの? もしかして私を捨てて恵美に乗り換えようとしてるの?」
「何を言ってるんだよ。この馬鹿」
まさか堂々とそんなことをする訳がないだろ。
「それよりも鈴奈、そろそろ花火が上がるぞ」
「え、本当? じゃ、行こ行こ」
「そうも簡単にはいかないんだ。それにもっといい場所がある」
「そう、町田君が調べてくれたみたいなの」
「これも鈴奈のためだからな」
俺は腰を上げ、そのまま二人を連れて丘の上に向かう。
「ネットで調べたらここが穴場って出てたんだ。そのブログはあまり閲覧人数が多くなかったから大丈夫だと思う」
「いい所見つけたね」
「やるじゃん」
二人から褒められて少し嬉しい。
「あとはちゃんと見れるかだけどねー」
「見れるに決まってんだろ。ブログに書いてあったんだから」
「ブログに頼りすぎじゃない?」
「うるせえ」
そして、その一〇秒後、花火がボツボツと空に浮かんでは消えていく。
とりあえずいい感じで花火が見れて一安心だ。
「安心した?」
鈴奈がにやにやとした様子で言った。
「るせえ」
俺はその鈴奈の言葉に対してそっと顔をそむけた。
その後も花火は続いていく。
迫力満点で俺たちは花火をしっかりと目に入れていく。
これが鈴奈とみる最後の花火なのだから。
気づけば俺の腕は鈴奈の方に向かって行く。
鈴奈の腕をつかみたいという欲求だ。
手をつなぐという事は鈴奈と俺の間では普通の事だ。
だが、俺が今からしようとしていることは、そう、恋人のようなつなぎ方だ。
鈴奈も俺の方を見た。そしてニヤリとしながら俺の手を取った。
その鈴奈の手は暖かい。そして鈴奈の顔を見たら少しだけ赤くなっていた。
それは俺の理想が生み出した幻想なのだろうか。
それとも今のこの姿を相原さんに見られているからなのだろうか。
だが、どちらでもいい。
少なくとも俺は今人生で一番きれいな花火を見ているのだから。
そして、最後の花火ラッシュが始まった。
花火で空が様々な色で埋め尽くされていく。
すごいなと思った。
そうして、花火が終わった。終わってしまった、
その瞬間寂しくなる。
もう、鈴奈とは花火が見れないんだなと思って。
歩と鈴奈の顔を見る。すると彼女の目から一粒の涙が零れ落ちるのが見えた。
鈴奈も俺と同じ気持ちなんだなと思い、少し嬉しくなった。
「終わっちゃったな」
鈴奈に語り掛ける。
「うん、綺麗だったわ」
その鈴奈の言葉にはやはり言葉以上の重みがある。
俺は咄嗟に鈴奈に抱き着いてしまった。
「鈴奈、大丈夫だ。俺がついてる」
「……うん」
鈴奈は泣きながら俺に抱き着いた。
その姿は今にも消えてしまいそうに儚かった。
「ねえ、人前でいちゃつかないで」
丘から降りる最中に相原さんが言った。
確かにあの時の俺たちは、少なくとも俺は相原さんのことをないがしろにしていた。
怒ってもいいと思う。
「いちゃついて悪いの?」
あれ、鈴奈?
「やっぱり付き合ってないの?」
「付き合ってないよ。私たちは同盟だよ」
「やっぱり同じことを言うんだね……。私も仲間に入れてよ」
「だめーーーーーーーー」
舌を出して言う鈴奈。
「言ってやってもいいんじゃないか?」
「いや、絶対に知られたくないの!!」
バッテンマークを作る鈴奈。
どれだけばれたくないんだよ。
それをうけて相原さんは不満そうな顔をしている。
「でも、時が来たら教えてあげるから」
「本当? それっていつよ」
「私の誕生日くらいかなあ」
鈴奈はそう言っているが、教えるときというのは、実際鈴奈が死ぬときだろうか。
そして教えるんじゃなく、自然と知る形になるんだろうな。
そんなことを考えていたらまた鈴奈の死が感じられて嫌だ。
その時まで真実を知れないというのはかわいそうだが、鈴奈が知られたくないと言っている以上、俺から伝えるのもおかしい話だ。
鈴奈が明るいのに、俺が落ち込んでいたらダメだろ。
「なーに暗い顔してるの? 花火見れてよかったじゃん」
あ、鈴奈はやっぱり明るいな。
そんな笑顔を見て俺も落ち込んでられないなと思った。



